【BL】ざまぁされたヒロイン♂だけど、最強クラスの魔導士なので教師になります

海月 ぴけ

第1話

ーーどうしてこうなってしまったんだろう。


ここは王立魔法学園。三代大陸国のうちの一つ、ルナムーン大陸一の剣と魔法の学舎である。


学園の全教師は大陸の中でも魔導士、剣聖他、優れた者のみを厳選しており、彼らから学んだ歴は生涯の財産になると言われている。


そのため大陸中の貴族達が大金を支払いこぞってやってくるのだ。


今は高等部2年の魔法学の授業時間である。


困惑する生徒達の目の前。桃色の髪の可憐な男が、四つん這いになったこの国の″第一王子″の尻をニコニコと女神のような笑顔で踏みつけていた。


「さぁ、授業をはじめますーー。」


ざわつく生徒達の中で、桃色の髪の妖精のような男はふとこんなことを考えていた。


ーーエンディングを迎えた後のヒロインってのは最強なのかもしれないと。


群衆の中心では黒髪の美しい男が慌てたように目を泳がせている。まるでこの状況が自分の予想と反しているかのように。悔しそうに拳を握りしめていた。


周りの視線を感じてか、桃色の髪の男の足の下になっている第一王子はぷるぷると怒りと羞恥で震えていた。


王の血を引くものであろうが、元罪人であろうが、この学園内では強者が全てである。


桃髪の男は澄ました顔で、自分を陥れてその座を奪った黒髪の転生者と、自分を捨て黒髪を選んだ元恋人の第一王子を交互に眺める。


こうならないとでも思っていたのだろうか。正直、俺の力をなめすぎだ。


そっと足を退ける。内心では冷たくあしらいつつ、俺は優しく微笑む。そして第一王子に手を差し伸べてこう言うのだ。


「やっぱり君はすごいね」


「‥、」


「魔力のコントロール、スピード‥努力しているのが一目で分かった。それも毎日欠かさず‥君は昔から本当に頑張り屋さんだね‥その努力は必ず実る。もっと強くなれる。ふふ、でも今のは油断しすぎ。」


「っ、!ル、ル‥」


軽く鼻先をつつく。目を見開く第一王子にとどめとばかりに満面の笑みをかませば、その苛立った双眼が懐かしげに優しく細められた。


「さぁ、立って。使えるものはなんでも使いなさい。君が強くなるために。ね?これからよろしく、″テノンくん″」


「‥、!‥は、い、‥よろしく、お願いします‥″ルル先生″‥。」


大きく見開かれた瞳が揺れて、風が俺たちを包んだ。恐る恐る掴まれた手は思っていたよりも優しい力で安心する。


なんだ、教師生活も案外うまくいきそうじゃん。俺は微笑んで穏やかな声で授業を再開する。


さぁ、俺の知識で生徒である君達を成長させてあげないと。魔法の力は無限大なんだから。



例え、その生徒達ってのが


ざまぁしてきた相手だったとしてもーー。



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