夜の森にて

@kafu714

第1話女子高生と水たまり

俺はクズだ。

自分の何がだめなのか、だから嫌われるのか、そんなこと全部わかりきっている。

直そうと思っても、長年付き添ってきた相棒みたいなものだからか何年経っても交われない、それを指摘されると悲しくて悔しくなってくる、自分でもわかってるんだそんなことは、だけど治らないんだ。

それが積み重なって学校へは行かなくなった。

最近は自分が学生であることを忘れ、一日中部屋でネットサーフィンをしている、親がなにか言って来ないのかと思うだろう?親は自分のことで精一杯、俺には目もくれず働いて、飯を食ってそれの繰り返しだ。

最近はネットサーフィンも飽きてきてどうしようかと天井を眺めていると一つ、暇つぶしの案が思いついてきた。

あの山へ行こう……と、あの山とはここから1キロぐらいの場所に夜蝶山という山がある、そこへ探検……自分探しのたびにでもいこうと思い、身支度を始める。

スマホに懐中電灯、何かあったときの非常食(パン2つに水一本)をリュックサックに詰める、外に出て自転車にまたがる、スマホを覗くと目に刺さるような光で

20:00と映し出している、ギイぃぃぃぃと錆びたチェーンから長年使っていなかったことへの恨みが聞こえてくる。

20:10山へつくと自転車を平坦な場所に止めて、リュックから懐中電灯を取り出しめの前を照らす、照らされた部分から広がる大自然に自分の小ささを知る、でも不思議と怖くはない、そんな独り言を頭で考えていると自分が今いる部分よりも先にガサッという音が聞こえてきた、くまか猪か……襲われてもこの世に未練は残ってない、そう思いズンズンと足を進めていく。

部屋にこもりきりだったからか昨日雨が降っていたことに今気づき、目の前には道を埋め尽くす水たまりを目で数えている、ヒョイと運動不足でもできそうな動きで水たまりを避けていく、あたりを見回しなにか居ないかと科学者気分で進んでいく。

するとまた斜め横からガサガサっと聞こえてくるまたかと呆れていると、足元からバシャッという音が耳へ入ってくる。

はぁ~とため息混じりに足元を覗くと太ももへ届くかわからないほどに服へ飛び散っていた、ジャージだから汚れてもいいと思っていたが実際に汚れてみると気分は最悪だ。

何分経ったかスマホを見る気にはならない、今自分がどこにいるかもわからない、今の自分と同じ状況じゃないかと心のなかで笑っていると、横から草をかき分けるような音が聞こえてくる、なにか来ると身構え音の方へと懐中電灯を向ける。

「うわっ!眩しッって……キャァァァァァァァ!」

とさっき来ていた道を戻ろうと振り返った直後にぬかるんだ地面に足を捕らえたのか、思いっきりコケていた、と落ち着いて実況している風に見える俺も実際は後ろ向きに倒れた挙げ句、水たまりに思いっきり突っ込んでいた

痛ったた……うえー最悪、これで帰らなきゃなのか……」

斑模様がびっしりとついたジャージに目をやり、絶望していると目の前にはギャグ漫画もびっくりな角度で足を上げてコケている。

はぁ~とため息を吐き立ち上がりその人?の方へと向かう

「あのー大丈夫ですか?」

声を掛けてみるが……返事が聞こえない大丈夫ではなさそうなのでどうしようかとタジタジしていると、「ブクブクブクブク……ぷはーあぶないとこだったー死因が水たまりで溺死になるとこだった……えっ人?こんな時間に?山に?何やってんの!?早く帰って寝ろー!!」とブーメランというものを知っているか聞きたくなったがそんなことは置いておこう。

「あのあなたもこんな時間に何やってるんですか?」

そう問いかけると数秒腕を組みうーんと考える仕草を見せると考えがまとまったのか口を開く「生きることへの意味探し?って言っても伝わんないか!」

彼女の特徴は髪は黒く短めのツインテールにしており、所々白髪が見えている、目は垂れ目でどこか愛くるしさを感じる、体は……俺には説明できなさそうだから飛ばそう、声は明るいが少ししゃがれており、疲れているのが見て取れる、

少しそこの木の下で話しませんか?」

数時間話してわかったことは彼女は俺と同じで学校生活に馴染めず、ただゆらゆらと夜に旅をしては朝こっそり帰り寝るという生活をかれこれ2ヶ月はつづけているという


説明も程々に俺が何故ここにいるのか自分が嫌いなことを話した、少しの沈黙の後彼女が声を上げた、「ふふっ、同じねぇ、まっでも今日みたいに人とあって、水たまりに突っ込んで、こうやって話すのも良いかもな!」とはにかむ

「まぁ綺麗事かもしれないですけど、学校なんてこの森に比べたら案外ちっぽけなもんなんですかね?」と俺がボソボソ口に出す

「そりゃそうだろう!?学校じゃ水たまりで溺れることなんかほぼねぇよ!」

「まぁわたしが言えたことじゃねぇけどよとりあえず学校言って好き勝手やってこいよ!そんで疲れたらここでまた思いっきり話せば良い!だろ?」

自分の中で何か小さな引っ掛かりが取れたような気がする。

「あの!それじゃあ名前教えてもらってもいいですか?話しにくいんで…」

おう!私名前はな!……」

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自転車をおいた場所まで戻ってくる、

「それじゃ、また疲れたら話に来ます!」

「おう!私はいつでも暇だからな!いつでも来い!」

自転車にまたがり漕ぎ始める、最初は恨みに聞こえたチェーンの音が何故か進むことを肯定してくれるように感じる、家の近くの信号まで差し掛かると、スマホを覗く時計は午前1:00を指している、そんなに喋っていたのかと思い何気なく空を見上げてみる、行きには感じなかった夜空の広さ、星の輝きが見える。

遠い目で見れば自分にもあの夜空のような広さや星のような輝きがあるのかわからないがそれでも、背中を押してもらえた気がした。

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6時間後久しぶりに制服に腕を通す、久しぶりの学校は少し怖いが昨日のあの人の言葉や自然の応援が背中を押してくれる、サイズが小さい靴を履き、扉を開ける目に突き刺さるような、久しぶりの日差しが目に沁みる、拳を握りしめできるだけ明るい声で叫ぶ

「い、いってきまーす!」

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