NYの銀世界を背景に、名前も知らない少年への一途な想いを綴る1773文字。「屋上の柵の外を眺めていた悲しそうな瞳」という一行だけで、少年が背負っているものの重さをさりげなく匂わせる筆致が秀逸です。
獏々が「欲しいものを靴下に入れたらママに見られるから心の中で念じた」という場面の愛らしさと、夢の中でも言葉が届かない切なさの落差が、この短編の温度をちょうどいいところに保っています。
本編を知らなくても一話として成立しつつ、読後に「この二人はどうなるんだろう」と自然に本編へ引っ張られる導線の作り方が上手い。「今夜あなたも遠くの大切な人と夢の中で会えますように」という結びも、読者を物語の世界にそっと包み込む余韻があります。