親バカの小鳥

ネオローレ

親バカな小鳥

ああ今日もわが子は可愛い。

チーチー鳴いて今日も餌を求めてくる。

その他の鳥の子ならうるさいと心の中で顔をしかめる声もわが子ならこんなにも愛しく聞こえる。

やはり私の妻との愛の結晶だからか?

あの雪の日、私は勇気を出して告白した。

自分の全力をこめた餌で私の愛を伝えた。

あの美しい早口のさえずりが聞こえたときの羽の暖かさは未だに羽の先に残っている。


チーー!チーー!


おや、思い出に浸っていたら急かされてしまった。

待っててね。愛しい子よ。今からエサをとってくるからね。

すぐに裏の木に回って串刺しにしてあったバッタを取ってくる。

わが子のためにまだまだ蓄えはあるが、わが子の食欲は底知れない。もうそろそろ追加で狩ってきたほうがいいかもしれない。

バッタと他の羽虫を幾ばくかを取り、再び巣へと羽を広げる。

うん?

戻ってくるとき、わが子がお尻で褐色の何かを押し出して落としていた。

不要なごみを捨てたのだろう。羽が痒かったのかもしれない。

さあ、餌だよ。食べやすい大きさに引き裂いてあげたからね。


チーー!チーー!


喜んで勢い良く食べている。本当にかわいい。これこそが生命の輝き。守るべき愛だ。


そういえばわが子はこの子一匹だけだったかな?


ふと疑問がよぎったが、すぐにどうでもよくなった。忘れてしまったのなら、それは重要ではないということだ。

それよりもこの子は今可愛く元気に生きている。それで十分ではないか。


ああ今日もわが子は可愛い。




巣の下に、いくつもの卵の亡骸がある事を、この鳥はまだ知らない。

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親バカの小鳥 ネオローレ @neoro-re

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