ドラゴン大空を翔ぶ

にゃべ♪

砂漠の遺跡で目覚めたドラゴン

 そこは砂漠に残された古代文明の遺跡。風化が進んでいるものの、その造形はかろうじて太古の栄華を現代に残している。その中にある祭壇には、人間の子供ほどの大きさのひとつの卵があった。卵はある日突然内側からの刺激でひび割れ、やがて新たな生命が顔を出す。殻を破ったのは幼体のドラゴン。

 まだ背中の羽も未成熟な地を這う彼は、初めて目にする地上の景色に好奇心を弾ませた。


 子供の好奇心で遺跡内を探検し尽くしたドラゴンの興味は、当然のように外界に向く。彼は小さな体を元気いっぱいに動かし、その興味の赴くまま遺跡の外へと足を踏み出した。

 純粋なふたつの水晶玉が映した外の景色は、どこまでも続く砂と空。同種の仲間はおろか、他の生物の姿すら認められない。この厳しい現実を前に、彼はしばらく途方に暮れた。


 一度は落胆したものの、無邪気なドラゴンは世界の広さを確かめようと砂の大地を歩き始める。どこまで行っても変わらない景色に飽きる前に空腹が襲った。

 彼は周囲を見渡し、食べられそうなものを探す。しかしどこにもそれらしきものは見当たらなかった。


 空腹が頂点に達しようとした時、彼の鼻腔を美味しそうな刺激がくすぐる。すぐに振り返って匂いの元に飛び込むと、そこはかつて彼が生まれた場所。そう、遺跡の祭壇の中央部だ。そこにいつの間にかドラゴンの好物が用意されていた。

 食べ物を見つけた腹ペコな彼は、秒でぺろりと平らげる。何故都合よく食べ物が用意されていたのか、そこに1ミリも疑問を覚える事もなく。満腹になったドラゴンはその場で眠りについた。


 翌日から彼は外の探索をメインに空腹になると遺跡に戻ると言うルーティーンを繰り返した。不思議な事に、お腹をすかして戻ると食事は必ず現れる。おかげで、彼は飢える事なく冒険の日々を楽しむ事が出来ていた。

 それを何度繰り返しただろう。何日、何ヶ月、何年が過ぎただろう。気がつくとドラゴンはまだ立派な大人とは言えないものの、かなりそれっぽい体型に成長していた。


 その頃にはもうある程度探索もし尽くしており、砂上の探索にも飽きが来る。そこで得られた事実は、どこにも生き物の姿は見られないと言う事。どこまでも走り抜けられたなら違う結果も見えてくるかも知れないものの、食事のために戻らないといけないために必然的に行動範囲には限界があった。


 もっと遠くに行きたいと思っていた彼は、砂の上にへたり込んで視線の先のどこまでも続く青を見る。この時、背中の羽がピクリと動いた。成長したドラゴンの羽はもう浮力を生み出すのに十分な力を秘めている。

 誰に教わるでもなく、気が付くと彼は翼を羽ばたかせて浮上していた。きっとそれは本能がなせる技なのだろう。


 空を飛ぶ能力を身に着けたドラゴンは、その翼を使って自由を謳歌する。ただ地上を歩くだけの頃と違い、その行動範囲は飛躍的に広がった。高く、低く、更にはくるりと回転したり、螺旋状に旋回しながら上昇したり下降したり。思いつく限りの飛行を堪能し、力の限界を見極めていく。

 やがて、ドラゴンが世界の果てを目指そうと試みる事になるのも必然だった。


 彼が力の限りの上昇を試みた時、その変化は起こる。地上から千メートルも離れた頃だろうか、突然強い指向性のある光が彼を目指して照射されたのだ。所謂レーザーが何本も彼の肉体を狙って撃ち込まれていく。

 最初の一撃で身体を焼かれたドラゴンはバランスを崩して降下。その後のチャレンジで、一定の高度を超えると攻撃される事に気付く。


 仕方なくドラゴンはその許された高度内の飛行を楽しんだものの、段々と怒りが蓄積されていった。その先にも空は続くの到達出来ないもどかしさ。

 怒りがレベルを超えた時、彼の身体に変化が起こる。行き場のない感情を吐き出すとそれが炎に変わったのだ。火炎放射能力を得たドラゴンは、自由を阻止する光を殲滅しようと動き出した。


 止めどもなく上昇した彼は、再び天の怒りの光に狙われる。それを器用に避けつつ、光の発生源に向かって火炎放射。長く伸びる炎はやがて空の果てを焦がして破壊させた。爆発に驚いた彼はその跡に注目する。ドラゴンが目にしたのは人工的に作られた機械的な天井。

 今まで果てしなく広がっていると思われていた空には明確な果てがあったのだ。物質的な壁が周りを覆っていて、そこに空の映像を映していただけに過ぎなかった。


 世界の真実を知った彼は更に炎を浴びせ続ける。その火炎は壁に沿って広がり、空を映していた機構を次々に壊していくばかり。今のままでは壁を破壊する事は出来ないと考えたドラゴンは更に感情のギアを上げた。

 怒りの質の変化は彼の火炎発射の質を変え、火炎弾を打ち出せるようになる。この新たに得た力を使い、ドラゴンは火炎弾を同じ場所に連続で当て続けた。


 何百回と当てる内についに壁は破壊され、その先に本物の空が顔を覗かせる。彼は目を輝かせながら吸い込まれるように上昇していった。

 壁を抜けたドラゴンが眼下を見下ろすと、今まで自分が暮らしていた世界が人工的に作られた大きな卵のような実験施設だった事が判明する。この衝撃的な事実に、彼はしばらく空中でホバリングするばかり。


 空中で静止していると、そこにドローンが数十台飛んできた。ドラゴンの周りに集まった飛行機械からコントロールルームにいる研究者達の映像が映され、謎の音波が放たれる。どうやら戻れと警告しているらしい。

 この現象から事態を把握したドラゴンはドローンを怒りに任せて蹴散らすと、遥か彼方に飛び去っていった。本物の空をどこまでも謳歌するように。



(おしまい)

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