王国立サンタクロース学園
葦葉つみれ
第1話 イヴはサンタクロース見習い
12月24日、クリスマス・イブ。
「そっちにある糸、取って!」
「ああっ! そこのマシン、今オレが使おうと思ったのに!」
「えっと、お手紙に書いてあるのは〜……」
それは、わたしたちの通う【王国立サンタクロース学園】が、最も忙しくなる日だ。
「はあー……」
白髪の少女・イヴは、思わずため息を吐く。
そのまま流れるようにエナジードリンクを傾けるが、残念ながら飲み終わってしまったみたいで、一滴とも垂れてきやしない。
――― わたしたち、サンタクロース見習いの主な仕事は『良い子たちに届けるプレゼント作り』である。
サンタクロースたちが代々受け継ぐ『魔法のマシン』がいっぱいに設置された工房に、サンタクロース見習いたちがこれまたギュッと詰められ、休みなしで働かされるのだ。
全国の良い子たちのため……とはいえ。
人混みも労働も大嫌いなイヴにとっては、毎年苦痛の時間でしかなかった。
「よっ! お疲れさんっ」
急にうなじに感じる、冷たい感覚。
「うわっ⁉︎」なんて間抜けな声を上げてから、イヴはゆっくりと振り返った。
「……ノエル! 脅かすのはやめてといつも言っているでしょう? 全く……」
イヴはそう咎めるような視線を向けるが、目の前の二つ結びの少女――ノエルには、そんなことは全く響いていないようだった。
いつも通りの人懐っこい笑みを浮かべている。
「あはは、ごめんごめん! なんかイヴちゃんの姿を見ると、あたしの中の
「偉大なるご先祖様になんて言い草つけるの」
聖ニコラウスといえば、わたしたちサンタクロースの祖先でありあるべき姿だ。
本来なら切腹ものの無礼だぞ、全く。
イヴは恨めしげに、横で楽しげに笑っているノエルの姿を見やる。
彼女は同期生の『ノエル』。
成績優秀・見た目も良い・(なんか憎いから認めたくはないが)性格も良い……という三点セットでありながら、劣等生であるイヴに構ってくる、変わり者なサンタクロース見習いだ。
「まあ、良いじゃんか。サンタクロースはクリスマスのためだけに生きていると言っても過言じゃないんだし。
もうひと頑張りだよ、イヴちゃん♪」
そう言ってノエルはイヴの肩を叩く。
対するイヴは納得できないのか、不満げに目を伏せた。
「……クリスマスなんて大嫌いよ。」
「あははっ。イヴちゃんたら、も〜」
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