第5話

「絶対、わがまま言わない。迷惑、かけたりしない。声、聞きたくなっても、私からは電話したりしない。会いたくなっても、我慢する。だから、お願い。」


「ごめん、月子。」


「……見捨てないで、」




俯いた月子が、音もなく泣いている。


ぽたぽた、地面に雫が落ちていく。




心を無にして、立ち上がった。





幼い頃から、月子からの想いには、気付いていた。応えられなくて、月子のことは家族と同じようにしか思えなくて、見ないふりをした。ずるくても、幼馴染としてしか隣に居てこなかった。


もうそれすらも、してあげられないから。





「もう、会えない。」


「…………うん。」


「連絡も、できない。」


「……どうしても?」


「うん。ごめん。」




きっぱりとした態度に、月子は絶望に染まった声色で呟く。


痛む心は自己満足の代物で誰のためにもならない、そう自分に言い聞かせた。





「さよなら、月子。」


「……海斗、」







大好きだよ。



背中越しに小さく伝えられた、月子からの言葉。


反応はしないまま、この場所から、月子から、離れていった。

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