実験の日
「牧野、こっちこっち」
近くまで寄ると会員に手招きされた。
「え、なに、厳重装備じゃん。それにテントまで立ててさ」
「学校から借りたんだよ。牧野の安全距離確保したくて、顧問と相談したんだ。このテントの下に長机置いてあるだろ。あれより、ロケット側に近づいたらダメ」
「え!? ロケット上げるの? 自作?」
「さすがに既製品だけど、中に入ってるキャリアは自作したよ」
「ふーん。まぁいいや。ロケット上昇した瞬間の写真撮影しますから」
「会長、説明これだけでいいんですか?」
「
「会長、準備できました? 俺たち牧野と一緒に下がりますよ」
「ああ。さっそく実験しよう」
他の会員二人と僕は三歩後ろへ下がった。
首にかけたデジタルカメラを今日はやたらと重く感じる。
「カウント開始! 五、四っ……三っ、二っ……一っ! 発射!」
飛鳥井の声と同時にリモコンのボタンが押される。
ロケットが上昇し始め、まず一枚目の写真を撮影する。
上昇し始めたロケットの機体がどこまで上がっていくか知りたくて、テントの外に出た。
会員二人もついてくるが、邪魔はされない。
空へ上がっていくロケットをズームして撮影する。
ロケットからラグビーボール状の球体が飛び出し、そこからさらにジュース缶が卵の殻が割れたように出た。
レンズは覗いたままだったから、そのまま何枚も写真を撮った。
ジュース缶にはパラシュートがついていて、フワフワと地上へと落ちていく。
遠くから学生の歓声がざわめくように聞こえてくる。
「あいつら、窓開けちゃってんな」
顧問がぼやいた。
パラシュートが地上へ着くはためいた瞬間と、浮力を失ってパラシュート自体が地面へ着き缶が転がる瞬間を写真に収める。
「やった! 牧野、あとの取材は任せる!」
彼らがウイニングランのように駆けだしていくと、遠くの校舎から聞こえる歓声は盛りあがった。
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