ブルーボーダーAS 「夕焼け色のサンタクロース」

黒舌チャウ

第1話  フリッパー小隊

「十分後に帰投予定だ! ペース上げろぉっ!」



 整備主任のピートさんの大声に応えるように、キャンプの中は一層慌ただしくなった。



「ピートさん! これは、ここでいい!?」


「ああ、そこでいい! それから、作業はそこまででいい! お前さんは、水を用意しといてくれ!」


「わかった!」



 持っていた機材を置いて、キャンプの奥にある貯水タンクに走った。

 専用のボトルにそれぞれ水を入れていく。


 水はとっても貴重で、一滴も無駄にはできない。

 


「慎重に……でも『急ぎで』……っと」



 ボトルは三本。

 しっかりキャップを締めて、胸に抱えて戻った。



「ピートさん!」


「おう、すまんな、バーニー。隊長たちも喉を枯らしてるだろうからな」


「うん! ……でも、ピートさん。隊長、この間の水でお腹壊してたけど、今度のは大丈夫かな?」


「今回のは煮沸してるからな。その後タンクに貯めてたのは気になるが……まぁ、大丈夫だろう! ハッハッ!」


「えぇぇ……」



 隊長たちは地球の水が「合わない」みたい。


 特に隊長はひどくて、この間なんて、汲みたての地下水を飲んでから一日中トイレに籠もりっきりだった。

 

 あんなにきれいな水だったのに。

 俺なんて、おいしくて何杯も飲んじゃった。


 異星人ドロッパーって、繊細なんだ。




「おっ。来たな。……ん?」



 ピートさんの視線の先から、地響きをさせて大きな機体が近づいてきた。


 人型機動兵器「バトリーク」。

 その中でも陸戦用に改良された【ロックホッパー】っていう機体で、他の「バトリーク」と違って空は飛べないみたい。


 俺も隊長によく乗せてもらってるけど、どうせなら飛べる機体がよかったな。




 停止した【ロックホッパー】三機に、整備のみんなが近づく。


 「みんな」といっても、一機に一人ずつ。

 俺や、通信の係の人たちも手伝ってるけど、工具やパーツを運ぶぐらいしかできない。

 ピートさんもよく「全く手が足らない」って、ぼやいてる。


 ピートさんが担当の隊長機に近づくと、コックピットのハッチがゆっくり開いた。

 隊長の、いつもの優しい顔が見える。

 



「隊長、お疲れ様です。しかし、こりゃあ……。また、ずいぶん派手にやられましたなぁ」


「いやはや……悪いね、ピート。余剰パーツはありそうかい?」


「あるにはありますけどね。こう補給が滞ってちゃ、そろそろ厳しいですよ?」


「いつも苦労をかけて申し訳ない」



 隊長が頭を掻きながら苦笑いしていると、三番機のハッチが開いて、それと同時に怒鳴り声が響いた。

 




 

 





 

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