第3話

「パパだ! やっぱりサンタさんはパパだったんだ!」


子どものはしゃぐ声を聞きながら、サンタさん──お父さんは、お母さんの頬にキスします。目に涙を浮かべながら、お母さんもお返しに頬にキスをしました。その唇は、少し震えていました。


「あー!」


子どもがいっそう大きな声で叫びます。


「僕見ちゃった! ママがサンタさんとキスしてるところ!」


サンタさんは言葉もなく微笑んで、お母さんの作ったクッキーをつまみ、静かに消えていきました。


「来年もきてね。ぜったいよ」


瞬きを繰り返し、今にも泣きそうになりながら、お母さんはつぶやきます。そして子どもを抱きしめて、こう言うのです。


「メリークリスマス。おやすみなさい」


これはある年の12月24日の、ある家のお話。聖なる夜の使者は、おもちゃもお菓子も置いていきませんでした。


それでも、お母さんと子供に、かけがえのないプレゼントを渡しました。


今日はお父さんが亡くなってから二度目のクリスマス。玄関に並ぶ写真の中のお父さんも、少し嬉しそうです。

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ママがサンタにキスをした! 裏窓秋 @BanSoTan

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