愛しのたまごちゃん。

八万

コカコのたまご。


 あたいのなまえはコカコ。


 コカトリスレディなの。


 いわば魔物であるコカトリスの頂点に立つ女王ね。


 ねえ聞いて! じつは今朝とってもとっても幸せなことが起こったの!


 何と、念願だった愛するダーリンである、たいむとの愛の結晶が生まれたの!


 うふふ♡


 いまは、あたいのお腹の下で温めているわ。


 あたいとダーリンのかわいいたまご。


 きっとダーリンのようにステキなコが誕生するに違いないわ。


 男の子ならタマオ、女の子ならタマミ、がいいかしら。


 うふふ♡


 さて、今朝もちょっとだけダンジョンを走ってこようかしら。


 嬉しすぎてじっとなんてしていられないもの!





「ゼェ……ゼェ……」


 ちょっと張りきって走りすぎたわ。


 あたいのたまごちゃん、元気におるすばんしてまちたかぁ♡


「???」


 え? え? あたいのたまごちゃんが……無いぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?


「おっ、コカコお帰り。いま朝飯作ってるからな。ちょっと待っててくれ」


 ぎょっとして振り向くと、ダーリンが四角いフライパンで何かを焼いていた。


 その傍らには……割れたたまごの殻が……


「ナニシトンジャ、ボケェェェェェェェェェェェッ!!!」

「のぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ……ぐへっ」


 あたいのキックがバスタオル男の横っ面に入り、吹っ飛んでいった。





「コカコ、アーンして」

「あーん♡」


 愛するダーリンが、あたいを膝に乗せて食べさせてくれる。


「どうだ? うまいか?」

「うん、おいち♡」


 ふわふわの甘いたまご焼きが、あたいの口の中を幸せでいっぱいにする。


 ダーリンの作った料理はいつも愛情たっぷりでおいちいの。



「おい変態……我にもその旨そうなたまご焼きをくれなのだっ」


 あたいはアカンベーをおみまいする。


 たいむのダメな師匠アスカは、真横でほっぺをふくらませて悔しそう。


 実はすべてアスカのいたずらだったのよぉぉぉぉぉっ!


 ひどいわっ!


 いつかきっと、ダーリンとの愛のたまごを産んで、アスカにぎゃふんって言わすんだから!



「ダーリン、もっとほしいの♡」

「いや、いつから俺がダーリンになったんだ……」


 うふ、テレてるダーリンもかわいいわ♡



 ちゅ♡

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愛しのたまごちゃん。 八万 @itou999

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