第3話 トレーニング

 あれからしばらくたち、今は二月の頭だ。

 今日も今日とてレンとトレーニングだ。

 吐いた息が白く広がって、すぐに冬の空気に溶けてゆく。


「今日寒いよねー」


 ストレッチをしていると横からレンが。そんなことを言う。


「当たり前だろ冬なんだから」

「ハヤトは寒さなんて関係ないみたいだね」


 この体は少し体温が高いからかもしれない、まぁでも寒いことは寒い。


「走ればすぐに温まるさ」


 そう言って、軽く笑いながらレンの肩を軽くたたいた。

 ストレッチが終わったので俺はこひなと共に先に走り出す。


「置いていかないでよー!」


 レンが慌てて追ってくる。

 走り始めはかなり寒かったが走り続けるうちに頬が熱くなり、冷たい風が逆に気持ちよく感じてくる。


「レン、なるべく深い呼吸を心がけろよ、呼吸のリズムをステップに合わせるんだ」

「やってみる」


 公園を三周する頃には、俺の息は白く荒く、額には汗がにじんでいた。


「……はぁ、はぁ……ハヤト、速すぎ……」


 レンが情けなく言うので、俺は振り返って笑った。


「お前が遅いんだよ。でも前より走れてる。ちゃんと成長してるじゃないか」

「……ありがと」

「礼はいいよ。ほら、水飲めよ」


 俺がレンに水筒を渡す。


「休憩が終わったらまた走るぞ」

「えぇーまだやるのー?」

「冬は体が冷えやすいんだ動いて温めないと」


 それからもう少し走ってるとレンが音を上げたのでランニングは終了にする。


「今日この後どうするの?」

「筋トレだ。お前も家に来いよ、家には筋トレ用の器具とかあるし、どうせお前もやるんだから一緒にやろうぜ」

「うん、わかったよ」


 俺とレンとこひなで俺ん家へと向かう。


 家に帰る途中ルネットに通知が入る。遥香さんからだ。


 遥香

『今日、残業確定しちゃった……隼人くんの声、聞けると思って頑張ってたのに』


 隼人

『お疲れ様。遅くなるの?」


 遥香

『クライアントから急な修正依頼が来て、明日の朝までに必要だから、今日は帰れそうにないかも』


 隼人

『……そっか。じゃあ仕事が終わるように応援してる。がんばってね』


 遥香

『元気出た! 頑張ってくるね、じゃあまたね』


 遥香さんは広告代理店で働いてるようだ、割といつでも忙しそうだった。


「誰から?」

「ハルカさんだよ。今日は残業だって」

「大人は大変そうだよね」

「そうだな。ついたぞ」


 俺の家はいわゆる高級マンションだ。駅徒歩5分以内で立地もいいしコンビニも近くて治安もいい。

 玄関を開けると、こひなは玄関のマットで足を拭いて入っていった。

 電気をつけるとココがにゃーんと出迎えに来てくれた。


「ハヤトん家の猫は何度みてもかわいいね」

「ココに構ってないでさっさと始めるぞ」


 俺はリビング横の洋室にヨガマットを二枚敷く。

 この洋室にはいろいろ置いてある窓の近くにはランニングマシーンが置かれてリビング側にはチェストプレスがある。

 部屋の隅にはダンベルラックがありダンベルは重さを変更できるタイプのダンベルが置いてある。ベンチプレスもある。

 これらの機器は主に母親が使っている。母は女性らしいしなやかな筋肉で引き締まったいい体をしている。


「まずはプランクからだ、30秒を二セット」


 プランクはお腹や背中腰回りを鍛えるトレーニングだ。体感も鍛えられる。

 やり方は簡単で、まずうつぶせになる、次に肘を肩の真下に置き、肘は90度。つま先を立てて、お腹とお尻を軽く締めながら体を浮かせる。この時頭からかかとまで一直線にする。ここが大事だ。


「レン、腰が上がりすぎてるぞ」

「うん……これ意外ときつくて」

「その分効果はある。ほら背中まっすぐな、鏡見ながらやればいい」


 次はサイドプランク。今度は身体を横向きにして肘と足の側面だけで身体を支える、これを左右20秒だ。これを終わらせる。


「次は胸を鍛えるぞ」


 俺はチューブを渡す。


「母さんのは重いから、こっちで練習な」

「どう使うの?」

「これを背中に回して、肩の高さくらいで持つんだよ」

「こう?」

「ほら鏡を見て、足は前後にして、体がぐらつかないように」

「こんな感じ?」

「うん、いい感じ」


 俺も同じポーズをとる。肘は軽く曲げ、手は胸の横。


「じゃあ押すぞ。せーの」


 二人で同時に前へ押し出す。チューブが伸びて胸に効く。


「っ……ハヤトこれ思ったよりキツい…… !」

「胸を使って押すんだ。腕じゃなくて」

「あと3回。1……2……ラスト!」


 ふぅー。次は3キロのダンベルを使ってのベンチプレスだ。ベンチ台に寝て軽いダンベルを押す。重さよりフォーム重視だ。


「次は何?」

「スクワットだ」


 二人で同時にゆっくりと腰を落とす。膝はつま先の方向へ、背中はまっすぐにしお尻を後ろに引く。


「もう足がパンパンだよ」

「頑張れあと少しだ」


 これですべてのメニューが終わった。あとはストレッチだ


「お疲れこれですべて終わりだ。ほらプロテイン」


 ちゃんと子供用のプロテインだ。


「ありがとう」

「にしてもトレーニング初めて一か月ちょっと効果出てきたんじゃないか?」


 汗を拭きながらレンにもタオルを渡す。


「そうかな? うーん確かにちょっと筋肉ついてきたかも」

「ちょっと脱いでみろよ」

「うんハヤトも見せてね」


 俺もレンも服を脱ぐ。

 前に比べて筋肉がついてきたように見える。腹筋も割れてきたようだ。


「ハヤトはすごいね結構筋肉ついてる」


 鏡の前でポージングをとってみる。だいぶ体が出来てきたかな、これ以上は身体が成長してからだね。しばらくは維持するに留めておくか。


「ただいまーってあなたたちなんて格好してるの!」

「うわっ!」


 母親が帰ってきたようだった。気づかなかった。レンも驚いているからレンも気づかなかったのだろう。

 レンは慌てて服を着る


「こんにちはお邪魔してます」

「ええ、いらっしゃい」


「おかえり母さん、見て結構筋肉ついてきたんじゃない?」

「いいから服を着なさい」


 そう言いながらも目はこっちを見て離さない。少しいたずら心が湧く。


 母さんに近づき、胸をガシッと鷲掴みにしながら耳元を口に寄せて囁く。


「沙織、愛してるよ」


「っ! ……それ以上はダメよ、本当に戻れなくなるわ。早く服を着てちょうだい」


「わかったよ」


「まったくとんでもない息子に育ったわね、女殺しだわ」


 狙った獲物は絶対に落としてみせる。そんな男になる。


「もうこんな時間なんだね、僕はもう帰るよ」


 時計の針は18時を10分を指していた。


「おう気をつけて帰れよ」

「またねハヤト、おばさん」

「はーい、またいらっしゃい」


 こひなを少し撫でてから、そのまま帰っていった。


「さてと……まずはお風呂ね、お湯張ってくるわね」


 母さんはお風呂の掃除を終わらせるとお湯張りのボタンを押し。夕飯作りを始める。


「母さん今日の晩ご飯何?」


 母さんはフライパンを温めながら、ちらっとこっちを見る。


「サラダチキンと野菜のレモンサラダとサーモンのホイル焼きよ」


「それにしても、いい子ね、蓮くん。素直で」


「そうだろ? 努力家だし」


「うん。それに、ハヤトがちゃんと面倒見てるのがわかるわ」


「でも、あんまり根を詰めすぎないで。体を鍛えるのはいいことだけど、目的を急ぎすぎると、心が追いつかなくなるわよ」


「大丈夫だよ。無理はしてない」


「それならいいんだけど」


 少し心配しているような声だった。


「何かあったら言いなさい。あなたは一人じゃないんだから」


「うん、ありがとう」


 母はそれ以上踏み込まず、器を並べ始めるのだった。



 ☆



 夜中トイレに行きたくて目が覚める。

 寒さのせいで目がさえてしまった。

 トイレから自分の部屋に戻る途中、母さんの部屋の扉が少し開いており、豆電球の光が漏れている


「母さんまだ起きてるのかな」


 扉を閉めてあげようと近づくと中から、ハヤト、ハヤトと声が聞こえる。

 中を見て驚く

 どうやら、俺をおかずにエッチなことをしていたようだ


「母さん」


 俺は部屋に入り母に声をかける。


「ハヤト! これはその、違うのっ!」


 母さんが珍しく動揺している。しかし改めてみるといい体をしている。

 母さんに近づいていく。


「大丈夫だよ母さん」


 母さんに安心するように声をかける。


「母さんがこうなったのって、俺のせいだよね」

「貴方のせいじゃないわ! 母さんがいけないの、息子に欲情してしまう母さんがいけないのよ」


 この世界近親相姦は珍しくない。

 世の男性も家族には心を開くケースが多いようだ。

 起き上がろうとした母さんの上に乗り服を脱ぎ始める。


「いいんだよ母さん、俺は世の中の男と違って女性に忌避感なんてないし、母親の事も異性としてみてしまう。ごめんね母さん」

「はるとぉ」

「だからいいんだよ、素直になって」


 俺は母親を押し倒した。

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