元気がない? それならとりあえず卵を食っとけ。
新佐名ハローズ
卵なんて何個でもいけますからね。
卵。それは大いなる活力の
一般的に食されるのはコッケコカコココッコーという魔鳥の卵だ。名前がやたら長いがこれは鳴き声から来てるので、文句は面倒な名を付けた先人に言ってくれ。
こいつは多少気が荒いものの脅威という程じゃあない。向こうも人間と共生したほうが危険も少ないと思っているのか、特に地方の村では数十羽単位で飼われていたりもする。
基本的にメスはポコポコと卵をよく産む。そのままでは雛として孵らない無命卵だが、これぞという個体をオスが選び出して自らの魔力を注入し、その後でメスの厳しい選別を経た数個が温められながらメスの魔力も注入する事で魂が宿り、初めて雛が生まれてくると言われている。
そういう生態であるから残された卵は落選組であり要らない子、というワケだ。ならばそいつは人間が食料として有効活用してやればアイツらからしても処分する手間が省けて楽だし、利益を提供した見返りにある程度は自らの身の安全が保証されるという相互関係が得られるって寸法だな。
その卵達は飼っている村で消費される事が多いものの、近くの街まで運ばれて売られ貴重な収入源になったりもする。
卵の入手できる頻度や難易度は場所によって様々で、消費のされ方も入手の容易さによって大きく変わる。簡単に手に入るならその辺の手頃な食堂で肉料理と共に
その場合は大抵ゆで卵として装飾のついた専用の容器に立った状態で置かれ、これみよがしに店員が殻を剥くのを見てほくそ笑む……というのが金持ちの正しい作法だとか。俺からすれば実に下らん茶番に過ぎんがな。
で、俺の場合はとある伝手から定期的かつ大量に手に入れられる。魔鳥の卵であれば多少日持ちが良いのもあって、いくらあっても困らない。
今回はそんな俺だからやるとっておきの食い方を伝授しよう。まず、コッケコカコココッコーの卵を最低十個は用意する。ここで二、三個なんざっつうケチ臭い事はやらないのが鉄則だ。理由は簡単、見た目がショボくなるから。
次にブモブフォーというデカい鼻とゴツい牙が目立つ四足歩行の魔獣を狩ってくる。こいつは突進力全振りで太い木の幹も圧し折る厄介なやつだ。肉も旨いし牙や毛皮が加工品の素材としてそこそこの値で売れるが、今回使うのはそういう物を剥ぎ取って整えた後に残る脂身を加工した通称ブモ
結構な量が取れるがそのままだと匂いがキツいし放っとくと臭くなる。だからデカい鍋に脂身と少しの水を入れてゆっくりと焦げないように加熱してやると、脂が溶けて臭みや苦みを含んだ泡が出てくる。こいつを丁寧に取り除き、時間が経つと脂身に混ざった細かな肉と脂がバラバラに分かれてくるから、それを一旦粗めの布で濾して肉と脂を分離させる。この残った細かい肉も他の料理に使えるから別で取っておくといい。
まだこの段階だと細かなクズが脂に混ざってるから、熱のあるうちにもう一度細かな目の布で濾して冷やすと、白く固まった綺麗なブモ油になる。こいつが味を増させる大事な一欠片。炒め物に使えば種とかから採れる油とは全然違うから、手に入れられるなら一度使ってみてくれ。
今回はこのブモ油をケチらず多めに使う。鍋に油が薄く浸るぐらいは欲しいな。それを熱して溶かし、ある程度熱くなったら卵を割り入れて一気に焼く。火加減は黒焦げにならない程度だ。俺はよく焼いたのが好きだからな。
卵が焼けたら皿に移して、様々な香辛料を混ぜた特製の粉(配合は秘伝だ)をこれでもかと振り、鍋に残った熱いままのブモ油をぶっ掛ける。最後に西方から取り寄せた黒い液(セーユとか言ってたか)を適量回し入れたら完成だ。
こいつをとにかく熱いうちに食う。見た目は茶色いというか黒い大量の目玉焼き。ガキが見たら泣き出すかも知れんが、こんな辺鄙な場所にそんなのは居ないから気にしない。
好みで焼いたパンノミー(というデカい実)か、これまた西方で作られるベイコックという細かい粒の種を水に浸して芯が無くなるまで煮たものを用意すれば、食が進むこと間違い無しだ。
まぁそうそう真似できるモンではないだろうが、騙されたと思って一度試してみてくれ。多分大抵のヤツが『騙しやがってこの野郎』って思うだろうがな!
元気がない? それならとりあえず卵を食っとけ。 新佐名ハローズ @Niisana_Hellos
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