【19:03】開会
会議室は地下三階にあった。窓はなく、空調の音だけが規則正しく響いていた。円卓には五人が座り、中央のホログラム投影装置が淡い青白い光を放っていた。
主任研究員Aが資料をテーブルに置いた。紙の資料だった。デジタルではなく。それが何を意味するのか、誰も口にしなかった。
A: 「本日の議題は単純です。未確定状態を、社会としてどこまで許容するか」
行政代表Dはすぐに応じた。彼の声には焦燥があった。
D: 「許容の問題ではありません。未確定はコストです」
C: 「"コスト"という言葉を、すでに使っている時点で危うい」
倫理顧問Cの言葉は静かだったが、部屋の空気が一瞬固まった。
B: 「感情論は不要でしょう。観測とは、事実を確定させる操作にすぎない」
応用技術主任Bは、自分のタブレットから視線を上げなかった。
C: 「操作ですか。では誰が操作されるのです?」
A: 「世界です」
設計補佐Eが、わずかに身を乗り出した。
E: 「……人ではなく?」
A: 「人も含まれる」
沈黙が訪れた。空調の音が、やけに大きく聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます