私の心は何色タマゴ
水定ゆう
第1話
世界の裏側にはまた別の世界が存在している。
所謂異世界のようなもので、私はその世界にある学校に通うことになった。
「では皆さん、お手を前に」
この学校の学園長先生で、魔女と呼ばれる女性がそう語り掛ける。
この世界には不思議なエネルギー、魔力が溢れていて、その力を利用することで魔法を使うことが出来るらしい。
普通に考えたら、そんなこと出来ない。
魔法なんて、物語の中にしかないもの。
私、
「見せよ、心の魔法。ハートエッグ」
学園長先生が魔法を唱えた。
すると胸がザワついて、急にポカポカした。
一体何? そう思うと、急に私達の体から何か飛び出して、ポワンと浮き上がった。
「な、なにこれ?」
完全に白い卵だった。
何だか綺麗、無垢って言うのかな?
私達の手の中に収まると、凄い繋がりを受け取る。
「それはみなさんの心そのものです」
学園長先生がそう語り掛ける。
何それ、はい? ってなった。
「心?」
心? この卵が私の心?
私達の心が目の前に現れたってことかな?
こんなことも出来るの!? 私のイメージの魔法と全然違う。
「私が魔法で具現化させました。もちろん、概念のようなものではありますが」
具現化された心の形?
何だか複雑だし、全然ピンと来なかった。
えっと、如何言うこと? キョトンとなるも、更にポカンとする。
「みなさんには、その心を孵して貰います」
この卵を孵すって、如何いうこと?
何を言ってるのかな、全然分からない。
孵すって、心を孵すの? はい、はい?
「「「ん?」」」
皆んな首を捻っていた。
ポカンとするのも無理は無いよ。
だって何言ってるのか初見だと判断出来ない。
「そんな顔をされるのも仕方がありませんね。ですがその心を孵すことができれば、みなさんは魔法使いとしてスタート地点に立つことができます」
この卵を孵すことが出来れば、心を解放したことになる?
そう言うことが言いたそうで、でもあまりピンとは来ない。
だけどその後の言葉が印象的で、この卵を孵せないと魔法使いにはなれないって事実だ。
「この学園は魔法学校です。魔法を学び、イメージを形にする。しかしその本質は心の有り様、この世界は危険で満ちています。そんな世界を生きていくためには、魔法の力は特に意味を成します。ここにいる以上、みなさんは魔法使いの卵そのもの、みなさんの心を温め、孵し、広い世界に飛び立ってください」
学園長先生、カッコいいな。
両腕を広げ、大きな胸を露わにする。
でもそれは、自信の表れなんだ。もっと言えば、この世界で魔女と呼ばれる偉大な魔法使いであることを示していた。
「時間が掛かっても構いません。みなさんなら、必ずできる筈です。私は期待していますよ」
凄い、期待っていう重圧がのしかかる。
息が詰まりそうだけど、それだけの言葉の重み。
私は複雑な思いを抱くと、周りは皆んな興奮気味。如何しても乗り切れない中、取り残される形で学園長先生の宣言は終わった。
学園長先生が去った後。
私達は取り残されていた。
如何しよう、如何しよう如何しよう。
困惑する私は周りの声がうるさいほど聞こえる。
だって、皆んな凄く凄く興奮していた。
「よっしゃ!」
「魔法使いへの第一歩」
「私もいつか、大魔法使いに!?」
「やるぞやるぞやってやんぞー!」
皆んな凄いテンション感だ。
如何しよう、私は全然乗り切れない。
困り顔を浮かべて、手にした卵を両手で包む。
「サクラちゃん、どう?」
「えっ、アオミちゃん」
友達のアオミちゃんが声を掛けた。
私はハッとなって顔を上げる。
キョロリと振り返ると、瞬きを繰り返す。
「どうしたの、マメテッポウに攻撃されたみたいな顔して」
「豆鉄砲?」
ヤバい、全然分からない。
何言ってるのかな、全然付いていけない。
キョトンが止まらないけど、私は上手く合わせようとした。
「う、うん。そうだね」
「サクラちゃん、どんな子が産まれるかな?」
楽しそうに語り掛けるアオミちゃん。
にこやかな表情に、瞳はキラキラ光る。
まるで宝石のようで、私は圧倒された。
「アオミちゃんは楽しみ?」
「もちろんだよ。だってこれを孵さないと、魔法使いにはなれないんだよ?」
「うっ!」
グサリと胸を貫く言葉。
きっと何の気無しで言ったに違いないけど、私には重いよ。だって、卵を無事に孵せるのか不安だった。
「でも、大抵孵せるらしいよ?」
「大抵ってことは」
「あはは、大丈夫だよ! でもこれで私達も魔法使いか……みんなに憧れる魔法使いになりたいよね。いつかは魔女? なんてね」
大抵は孵せるってことは、無理な人もいるのかな?
ってことは、まさかとは思うけど……退学もある!?
そんな、スタートラインにも立てないなんて。そんなの嫌だよ!
「あはは、そうだね」
私は愛想笑いを浮かべた。
だって私にはアオミちゃんのような、夢は全然無い。もっと漠然としていて、目の前の不安で一杯で、みんなに憧れるような魔法使いには全然なれる気がしなかった。
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私の心は何色タマゴ 水定ゆう @mizusadayou
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