Lesson.2 『C3:Color Crystal Core』
はい、皆さんこんにちは!講師役を務めさせて頂くアイリスです。
今回は物語の核心になるアイテム、C3についてのお話です。毎回さらっと出てきて大事そうだけど良くわからない!っていう方が多そうですよね……。SF的な雰囲気作りのアイテムっぽいですが、実はかなりのキーアイテムですので、世界的に、そして物語的にどう重要であるかをお話していきますね。
まずこの歌に反応する水晶の設定を見て、SFファンの方なら巨匠アン・マキャフリィ女史のSF小説『クリスタル・シンガー』を連想されるかと思います。水晶が社会に及ぼす影響や重要性、水晶を扱うギルドの存在、そして歌い手たる『クリスタル・シンガー』……トワと私の物語はマキャフリィ先生の作品から大いに影響を受けていますので、共通する部分も多いです。あっ、もちろん私たちの物語には独自の要素もたくさんありますからね!?
まずC3についてですが、正式名称は本編でも示されているように「Color Crystal Core(輝彩水晶核)」という長いし呼びにくい名前です。貿易取引とかの正式文章には「輝彩水晶核」って書いてあるんですが、日常でこんな言葉使ってたら舌を噛んじゃいそうになるので普通は「C3」って呼ばれています。あ、発音は「シーキューブ」です。
この水晶状の物質は採掘時は透明から黒色までのモノトーンの結晶体なのですが、水晶の歌い手……つまりクリスタルシンガーとの共鳴によって色が与えられ、様々な能力を発揮するようになります。
ちなみにマキャフリィ先生の世界では水晶の色は採掘時から固定されていて、どの色を採掘できるかは採掘者たるシンガーの能力によって変化する……という設定なので、シンガーの能力や役割はちょっと違いますね。はい、ここ重要ポイントなのでよろしくお願いします!
さて、ではC3のお話に戻りますが、本編中でも語られるようにC3にはランクが設定されています。段階としてはSSからFランクまでの8段階。これはC3が持つ品質を示すグレードになります。C3の品質グレードは物質としての純度ではなく、後で説明を行う
高ランクのC3ほどエネルギー変換や増幅の効果が高くなりますが、当然のことながら産出量が少なくて貴重な上に、扱いも難しくなります。また増幅効果に応じて消費するエネルギーも多くなりますから、必ずしも高品質が全てにおいて優れているという訳ではありません。お値段以外は、ですけど。
ちなみにC3の基準価格は水晶体のサイズと品質で変化するんですが、これは体積をベースに品質グレートによる係数を掛け合わせる形で算出されています。Fランクは1倍の係数ですがEランクだと価格は2倍。その上のDランクだと4倍という風に倍々で係数が高くなって、SSランクになると128倍になるんですが……。実際はSランク以上のC3は産出量が非常に少ないため販売が入札制になっていることもあって、取引価格は基準価格とかけ離れた青天井になっています。
えっ、じゃあなんで基準価格があるか、ですか?それはですね……ギルド支部間で流通させる時の卸価格であったり、私達ギルド会員の貢献度査定用のレートであったりと、組織内の経費を安くあげるために設定してるんじゃないかと言うまことしやかな噂が……あっ、この話はスゥ局長には内緒にしておいてくださいね?
あと、C3の販売価格にはもう一つ追加される要素があります。それがクリスタルシンガーによる
あ、詳しいお話の前にシンガーについてお話しておかないといけませんね。
水晶の歌い手「クリスタルシンガー」は私達の世界では一般的には「シンガー」とだけ呼称されることが多い職業で、芸術や娯楽で歌を歌う職業の人は「歌手」とか「アイドル」と呼ばれていますので、そのあたりはちゃんと区別はされています。
モーリオンギルドに所属しているギルドメンバーは全員このシンガー能力を持っていますが、ギルドから「シンガー」として公式に認められるにはCランク以上の能力が必要になります。
シンガーとしてのランクは調律可能なC3の品質グレードに対応していて、CランクのシンガーであればCランク以下の品質のC3を
現在のギルドではCランク以上のシンガー能力は比較的希少な存在で、本編でもトワの学年だと二十数名のクラスの中から4人の候補生しか誕生していませんでしたよね。ちなみにトワの学年で実際にシンガーになれた――最終的にCランク以上と認定されたのはトワと、もう1人だけでした。
「シンガー」と言う職名から、全員が歌が上手いように思われるかもしれませんが実のところシンガーとしての能力と歌唱力は必ずしも一致しません。ですから、音痴な「シンガー」もいれば、歌は上手いけど「シンガー」になれない人もいるわけです。
トワですか?あの子は普段は鼻歌一つ歌いませんけど、ずば抜けたシンガー能力を持つと同時に天才的な歌唱力も持っています。まぁ、あの子は言うなれば『歌』の化身みたいなものですから、当然と言えば当然かもしれませんが。
話を続けますね。その希少なシンガーが持つ
この色の変化が「輝彩水晶核」と言うC3の正式名称の由来になる訳ですが……。ともあれ、調律のプロセスを経ないC3は何の能力も持たない単なる水晶でしかありません。それ故にシンガーを擁さない組織や惑星にはC3を取り扱うことが出来ないんです。いや、綺麗なのは綺麗なので宝飾品としては扱えますけどね。
ちなみに高級品であるC3ですが、意外と盗難被害に遭うことはあまりありません。なにせ未調律のC3はシンガーが歌わないと役に立ちませんし、シンガーはギルドが取り扱っていない出所の定かでは無いC3の調律依頼を引き受けたりしませんからね。
そして調律済みのC3については……大枚をはたいて買ったC3を盗まれた組織や企業、惑星の行政府が黙って見ている訳がありません。全力で――場合によってはギルドも参戦して――奪回作戦が展開されるので、結果として奪い損にしかなりません。そもそも逃げ切っても転売した時点でバレバレですからね。そんなリスクを犯すぐらいなら普通にギルドから購入した方がよっぽどまし、というわけです。ギルドから買えばアフターフォローもありますしね。
話がそれました。
シンガーがC3に与えられる色は「朱(あか)」「碧(みどり)」「蒼(あお)」の3色。色の持つ能力については本編で「私」やトワが触れていると思うので、そちらを参考にしていただくとして、ここではもう少し原理的なお話をしてゆきますね。
調律結果がこの3色である理由は光の三原色……皆さんの世界でいうところのRGBの表記と同じ構成によるものです。各色には能力グレードを示す色の強さ……「出力」のようなものがあり、これが高くなるほど色が強く、濃くなります。そしてシンガーの適性は、この色の輝きをどれだけ強く引き出せるかと言う「歌の出力」と、そしてどれだけ純粋に引き出せるか……「歌の純粋さ」の2つということになります。
トワのような超例外は別として、普通のシンガーは単色での調律しか行えません。ですが、それは「出来ない」というよりも「そうしている」という方が正しいんです。これは私の推測ですが、シンガーが調律可能な色は個人の性格や特性に影響を受けているふしがあります。
例えばトワの基本色は碧ですが、この色は基本的に自由や解放、速度を象徴する色になります。一方で「私」の得意な朱は熱意や勇気、出力や行動力を象徴しています。ね、なんとなくそんな印象があるでしょ?
でも人の性質ってそんなに簡単なものではないので、普通に調律を行うと個人の性格に応じて「混じった」色になっちゃうんです。混じると何が困るかと言うと……例えばキャパシティが10のC3があったとして、朱が6、蒼が4の調律を施すとキャパシティいっぱいにはなるんですが……結果としては最大でも朱の6しか能力が発揮されないんです。
さらに言えば混じってしまうと6の力が出ることすら稀で、普通なら混色は相互干渉を起こして能力を打ち消し合うため朱の2にしかなりません。ですから、シンガーは個性を抑えて「純色」で歌えるセンスが必須になるんです。
物語の冒頭にシンガー適性検査のお話があったと思いますが、あそこで適正なしと判断された子供達が沢山いますよね。候補生になれなった子供は「出力」がCランクに届く見込みがないと判定された子達。
そして候補生になれたけど、シンガーになれなかった子供は「歌う出力」はCランク以上でも「純色に出来ない」もしくは「純色にすると極端に出力が下がる」と判断された子達です。
シンガーを夢見る子供達にとって、ぬか喜びさせちゃう罪作りな能力ですよね……。あ、ちなみにトワのクラスでシンガーになれたもう1人は、トワの友達であるエミリーですが、彼女はクールなツンデレキャラで、蒼を歌うのにぴったりな性格をしていましたっけ。
さてC3のお話です。C3の主な機能はエネルギーの増幅・変換と共振による情報伝達の2種類であると言われています。えっ、どうして「言われている」か、ですか?それは「今は」まだ秘密です。乙女にも都合っていうものがあるのでご理解ください。いずれ、このお話をする機会がきっと訪れますので。ともあれ、それらの特性により人類は家庭用の雑貨から航宙船、恒星間通信まで様々な場面でC3を使った文明を築き上げているのです。
そういえばトワが持ってるお父さん……アルフレットおじさんの形見の水晶もC3だと思うんですけど、アレは虹色なのでギルドで取り扱っているC3とは随分違うんですよね。もしかしたらトワの出生と関係が……あるんじゃないかな、うん。ともあれ、今回のお話はこのあたりにしておきましょうか。
そうそう、最後になりますが……アン・マキャフリィ先生の「クリスタル・シンガー」シリーズは全3巻のうち2巻がハヤカワ文庫さんから日本語翻訳されたものが出版されています。マキャフリィ先生と言えば「パーンの竜騎士」シリーズで有名ですが、「クリスタル・シンガー」もSFファンに長く愛されている名作なんです。歌声と水晶が織りなす独特の世界観が素晴らしくて……えっヒロインのキラシャンドラさん?……え、ええ、すごい方です、はい。……ともあれ、これを読んだらきっと私たちの物語ももっと楽しめると思いますよ!
さて、では今回のお話はここまでです。また次回お会いしましょう!
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