孤独な王様の城

暇崎ルア

プロローグ 寒い公園にて

「白岡くんはあんまり人生に希望が持ててないんだっけ?」


 僕たち以外誰もいない寒い公園だった。

「そうです」の一言も言えず、僕はただ頷いた。


「そっか。でも、今人生辞めちゃおうとするのは止した方がいいよ」


 少しの無言のあと、彼女は言った。


「白岡くんが望んでること、あたし何度かギリギリまでいったことあるけど苦しいもん」


 その時だけびゅうううう、と音を立てて風が吹く音がやけに大きく聞こえた。

 それでも彼女の声ははっきりと聞こえてきた。


「すごく痛くて、怖くて、苦しい。君もこれからその瞬間を迎える日がくるだろうけど、できることなら経験は先延ばしにした方が良い。それまでは、オカルト何でも屋のあたしの仕事の手伝いをしてほしい」


 初めて会ったばかりの僕に、篤子さんは堂々と言い放った。

「オカルト何でも屋とは何だ」と疑問が浮かぶ前に、頭がずしりと痛んだ。


「……僕なんかお役に立てるんでしょうか」


 肌寒い風が吹く中、ようやく絞り出した卑下は自分でも滑稽に思えた。


「役に立つよ、むしろ君しかできない」


 風にショッキングピンクのショートヘアーを揺らさせながら、僕を見る篤子さんの顔は真剣だった。


「君をあたしの助手に任命する」

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