第11章 「秘密を追いかけて」

翌日、二人は図書室に向かい、先日見つけた古い本をさらに詳しく調べることにした。

「桜井、ここに“光の欠片”が身体を入れ替える条件って書いてある…」

蓮(咲)が指差すページには、謎めいた文章が並んでいる。


「“強い感情の衝突が生じたとき、身体の境界は曖昧になる”――だって」

咲(蓮)は眉をひそめる。

「感情の衝突…私たち、あの日の文化祭や体育祭のドキドキが関係してるのかな…?」


二人は黙ってページを読み進めながら、互いの存在を意識せざるを得ない。

手が自然と触れ合い、心臓が高鳴る。咲(蓮)は視線をそらすが、蓮(咲)はほんの少し微笑んで見つめ返す。


その日の放課後、二人は秘密の実験として、光の発生しやすい条件を再現してみることにした。

「よし…一緒に手を繋いで、強い感情をぶつけてみよう」

蓮(咲)が少し照れくさそうに言う。


咲(蓮)は頬を赤くしながらも、勇気を振り絞って手を差し出す。

「うん…やってみよう」


二人の手が触れ合った瞬間、また光が一瞬教室を包む。しかし、今回は強い光ではなく、二人の心を少しだけ揺らすような柔らかい光だった。

「……あれ?」

「光が弱いな」

二人は顔を見合わせ、笑みを浮かべる。少しの失敗も、二人にとっては胸キュンな瞬間になる。


その後、帰り道で小さな誤解が生まれる。

「桜井、今日のこと、どう思った?」

蓮(咲)が尋ねる。咲(蓮)は少し考え込み、誤解から素直に言えずにいた。

「えっと…別に…」

その反応に、蓮(咲)は心の中で少し落胆する。


しかし、夜になり、それぞれが一日の出来事を振り返ると、二人の心はやはり互いを意識していた。

(やっぱり、蓮のこと…好きだな)

(桜井…可愛いし、もっと近づきたい)


入れ替わりという非日常が、二人の心を揺らし、恋心をより強く育てる――小さな誤解や波乱も、二人の距離を少しずつ縮めていったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る