氷帝と猫かぶり后の寵愛契約 竜鱗宮入れ替わり譚
水守糸子/角川文庫 キャラクター文芸
序
竜神の
そして、
絹
目の前の祭壇には、
ここは竜神を
今日は、その重大な国事の日だ。
皇太子である
璃璃は星火の番いとなる后だ。
今、この場所で行われているのは、星火と璃璃の婚礼の儀式である。
「后陛下、こちらへ」
この国の神官《
十七歳になる、貴族・
細い雨のように背に流れる黒髪は、左右で
絹団扇越しにも香り立つ少女の可憐さに、列席した者たちがほうと息をのむ。
──噂どおり、まるで梅の花精のような姫君ね。
──ただ歩くだけなのに、なんと気品に満ちていらっしゃるのか……。
ため息まじりに周囲が
まるで梅の花がひらくような
璃璃の
竜珠国は竜神の末裔である皇族が治めており、彼らは皆ひときわうつくしい容姿を持って生まれつく。二十一歳になる次期皇帝、星火もその噂にたがわない。竜の
──星火さまもいつ見ても、本当におうつくしいわ。
──でも、相変わらずの「氷の君」ね。ご自身の婚礼であるのに
女官たちの囁き声に気を留めたふうもなく、星火はしきたりどおりに璃璃に手を差し出した。
その手に璃璃は手を重ねる。
廟の外では晴れた空からはらはらと天気雨が降った。
今は大地に眠りについた竜神が、祝福のために降らすものだといわれている。
気付いた
一同が深くこうべを垂れる。
そして手にした絹団扇の下で──
(よし!)
璃璃は天にこぶしを振り上げたいのを必死にこらえていた。
(わたくし、やりとげたわ!)
璃璃の胸に、喜びが湧き上がる。
ただし、それは打算まみれの腹黒い喜びである。
(この国一の玉の輿をわたくし、手に入れたわ……!)
この日、竜珠国一の可憐すぎる「猫かぶり姫」は、皇帝・星火と結婚した。
後世まで語り継がれる伝説の
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