第3話 第三章:決死の旅と幸せのあかし
小さなコオロギにとって、人間が運ぶ卵を追いかけるのは命がけの冒険でした。 鋭い爪を持つ野良猫、長い舌を伸ばすカエル、茂みから突然現るヘビ。何度も食べられそうになりながら彼は必死に跳ねました。
ようやくたどり着いたのは選卵場でした。入り口ではまたも危険な大きなクモが網を張って待ち構えていましたが、コオロギは勇気を振り絞ってその隙間を潜り抜けました。
「おーい! さっきの卵はどこだい!」 場内を探し回ると、ベルトコンベアの上から小さな声が聞こえました。 「ここだよ! 今、温かいシャワーを浴びているんだ。最高に気持ちいいよ!」
ピカピカに磨かれた卵は、次に厳しい検品のおばさんの前に並べられました。
「みんな、震えてどうしたんだい?」とコオロギが聞くと、卵たちは緊張した声で答えました。 「ここが一番の正念場なんだ。選ばれるか、弾かれるか・・・」
やがて、あのめんどりの卵がおばさんの手に取られました。光に透かされ、隅々まで調べられます。
「合格!」 おばさんの声とともに、卵はふかふかのパックの中に収まりました。
「やったあ! 僕は合格だ! 誰かの役に立てる。何て幸せなんだ!」
パックが閉じられる瞬間、卵は誇らしげに輝いて見えました。それを見届けたコオロギは、満足げに頷き急いで鶏舎への帰路につきました。
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