第6話

新人たちの熱気に満ちた訓練場に、模擬戦終了を告げる鐘が鳴り響く。

レイ・フリードの配属先は、その冷徹なまでの判断力と無音の殺傷能力を買われ、王国の「影」を担う隠密班に決定した。

「おい、レイ! これから新人歓迎の飲み会だ。団長もシエルさんも来るってよ。お前も来いよな!」

首筋をさすりながら意識を取り戻したカイルが、気まずさを隠すように明るい声をかける。周囲の新人たちも、模擬戦を制した「天才」を仲間に引き入れようと期待の眼差しを向けた。だが、レイはその誘いを、凍りつくような一瞥だけで切り捨てた。


「・・・興味ない。僕は帰る」

「えっ、でも、これからの付き合いとか・・・」

カイルの言葉が言い終わる前に、レイは背を向け、影に溶け込むような速さで歩き出していた。彼の脳内には、もはや騎士団の任務も、王国の栄光も存在しない。あるのはただ一点、暗い森の奥に隠した、自分だけの愛しい人のことだけだ。

(早く帰らないと・・・シュナが、お腹を空かせている。僕がいないと、あの人は何もできないんだから)

騎士団の制服を翻し、レイは街の喧騒を避けるように裏通りを駆ける。懐の手帳に触れ、そこに刻まれたシュナの吐息を指先でなぞる。その感触が、彼の焦燥をさらに加速させた。


雑木林の入り口に差し掛かる頃には、レイの足取りは、愛する獲物のもとへ急ぐ獣のそれとなっていた。

「ただいま、シュナ」

静まり返った小屋の扉を開ける。そこには、朝、自分が繋ぎ止めていったままの姿で、絶望と快楽の狭間にまどろむシュナがいた。レイは騎士としての冷徹な仮面を脱ぎ捨て、狂おしいほどの情愛を瞳に宿して彼女に歩み寄る。


「いい子にしてた? ほら、今日は騎士団から美味しいお肉を貰ってきたよ。食べたら、また、シュナの可愛い声を聞かせて・・・?」

そう言って、ベッドに横たわったシュナの胸にしゃぶりついた。その刺激だけで、またも濡れそぼり、愛らしい声がレイの耳を制圧する。

「もうっ、ダメだって・・・」

「ダメじゃないでしょ、ほら、もっと感じて・・・?」

「あっ、あぁ!」

新人団員の模擬戦の後の為、まだ興奮が収まらなかった。軽く愛液で濡れた所に、一気に自分のモノを突き入れる。欲望のまま腰を動かし、肉と肉がぶつかる音が小屋中に響いた。激しいピストン運動をしながら、シュナの胸の蕾をその口で舐めて、吸い、ただ快楽の地獄へと堕ちていった。


街では新兵たちが酒を酌み交わし、未来を語り合っている。その賑やかさとは対照的な、沈黙と支配に満ちた二人だけの夜。レイは満足げに、自分だけの熱を注ぎ込むのだった。

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