第四話 沈む時間
意識は、深い場所にあった。
眠っている、という感覚ではない。
起きている、とも言えない。
ただ、沈んでいる。
時間の流れが、分からなくなる。
昼か夜かも、判断できない。
それでも、音だけは届いていた。
遠くで鳴る電子音。
規則正しい足音。
誰かの話し声。
意味は、分からない。
だが、音としては分かる。
呼吸は続いている。
胸が上下する感覚もある。
自分が生きていることだけは、
はっきりしていた。
時々、胸の奥が揺れる。
小さく、
だが、確実に。
そのたびに、
何かが重なり合っていく感覚があった。
夢を見る。
だが、前と違う。
火は、遠い。
城も、輪郭だけだ。
細部は、見えない。
代わりに、
感覚だけが残る。
立っている。
逃げない。
選んでいる。
理由は分からない。
だが、その判断だけは揺がない。
どれくらい経ったのか、分からない。
日か、
それとも、もっとか。
ある時、
音が変わった。
話し声が、はっきり聞こえる。
「……五日目」
「反応は、安定しています」
数字だけが、頭に残る。
五日。
長いのか、短いのかは分からない。
胸の奥が、
少しだけ落ち着いた。
別の時には、
また声が聞こえた。
「……まだ起きません」
「呼吸は、問題ありません」
その言葉を聞いて、
なぜか安心した。
誰かが、近くにいる。
音ではない。
気配だ。
はっきりとは分からない。
だが、消えない。
見守られている、という感覚。
怖くはなかった。
むしろ、
自然だった。
胸の奥が、
静かに温まる。
火ではない。
熱でもない。
ただ、
確かに在る何か。
時間が、また沈む。
次に浮かび上がる時、
世界は少し違っている。
それだけは、
なぜか分かっていた。
そして――
これは、まだ途中だ。
完全な目覚めには、
もう少し時間が必要だった。
覚醒したら前世が織田信長だった!目立ちたくないけど!学園バトルゲーム援護として戦います ミルク @milku203
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。覚醒したら前世が織田信長だった!目立ちたくないけど!学園バトルゲーム援護として戦いますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます