頼りないのは自分のせいなのだから逃げてきたツケをそろそろ払っていただけますか?

海老衣揚

第1話

 小さな田舎村の農家生まれ。冴えない十二歳の少年、アリウス・ローレンはとくにやりたいこともなく毎日父の手伝いでジャガイモの収穫をしていた。

 

 十二歳になると大体の子供は王都に行き、騎士の学校に入学する。僕もそろそろその時期が迫ってきており憂鬱になっていた。


 「アリウス、今なにをしてる?」


 父、クリス・ローレンが僕を探していた。堅いところがある父は僕をどうしても騎士の学校に入れようと口酸っぱく話をしていた。父の昔話。


 「昔なぁ、騎士の学校を優等で卒業してなー」

  そのまま王都で団長を務めていたんだぞ

  数多くの魔物を狩り、ドラゴンさえも俺の

  前では大したことなかったんだ。はっはー」


 そんな自分がいるから僕にもその肩書きを押し付けてきてるだろう。そんなプレッシャー迷惑極まりない。


 「ここだよー。ジャガイモの収穫終わったよ。

  どうせ王都の話しだろう」


 「どうせってなんだ!お前ももう十二歳なんだ

  からそろそろ騎士を目指す準備をしないとい

  かないだろうが!」


 正直、乗り気ではない。のんびりとジャガイモの収穫してたほうが僕は性に合ってると自分を理解している。


 「その話しはいいよ。僕は農家になろうと思う

  んだけど・・・」


 恐る恐る伝えると、


 「ふざけたことを言うんじゃない。お前は騎士

  になり、私の意志を継ぐことこそが私の願い

  なんだ」


 「・・・はい」


 逆らえない。歯向かってもめんどくさいのは知っているから。そんな父を背中にして悟りながら荷台にジャガイモを積み込み出荷の準備をする。


 王都を目指して馬車を走らせる。たくさんジャガイモが獲れたから気持ちはウキウキしていた。


 「やっぱり僕にはこんなのんびりした世界が性

  に合ってるんだよなぁー。誰しもが騎士にな

  りたいわけじゃないだろうに」


 ぼやきながら馬を走らせ、原っぱを抜けると王都が見えてきた。大きなお城、建物が立ち並び壮観な風景だ。やはり王都は都会だと見惚れていた。


 「おはようございます、アリウスです。ジャガ

  イモを持ってきました」


 門をくぐり抜け大通りにを走らせる。武器屋、

魔法屋、服屋など色々なお店があり観光客気分で楽しく見て回った。一番端っこまで辿り着き、目的地の食糧屋に到着した。


 「おはようございます。ジャガイモを持ってき

  ました」


 馬車を止め、荷台からジャガイモを下ろしていく。


 「いつもお疲れ様。こんなにたくさんのジャガ

  イモ助かるよ。ありがとう」


 気さくでとてもいい店長さんだ。


 「アリウス君はそろそろ十二歳になるんじゃな

  いかなぁ。やはりお父さんと同じように立派

  な騎士を目指すのかい?」


 やはりその話題を振られた。「はー」ため息をつき質問に答える。


 「・・・そうですね。今、考えているところで

  す」


 適当に返答し全部のジャガイモを納品する。仕事を終えて余った時間を王都見物にあてた。すると、


 「騎士団のお通りーー!」


 大通りが人でいっぱいになり、キラキラの鎧を着た人たちが中央を歩いていた。あれが、みんなが目指す騎士の姿だ。本物を見てもやはり興味は湧かない。本当になりたくないことを再確認した。


 見物を終えて王都を後にする。


 「少し遅くなったなぁ。急いで帰るようにしよ

  う。お腹も空いたし」


 周りも暗くなり持っていたランプを照らし急いで村を目指す。原っぱに差し掛かった時、


 「ぐるぅあーーー」


 遠くから得体の知れない人とは思えない声が聞こえてきた。緊張が走り、馬車を止め、ランプで遠くを照らす。すると、


 「うまそうだなぁー。お前くらいの年頃が一番

  脂のノリが良くて私は大好きだぁぁ」


 魔物に初めて出会った。身体が鉛のように重くなり、動かない。固まっていると


 「どごーーん」


 馬が弾き飛ばされ、馬車から振り落とされた。それと同時に身体が動くようになり、方角もわからないがとにかく走り出した。とにかく前に。


 やばい・・・、死を覚悟しながら森の中に入っていく。死に物狂いに走り、大きなは気の影に身を隠す。手の震えがおさまらない。口を手で塞ぎ息をころす。遠くから不気味な声が聞こえる。


 「どこにいるー?おれのごちそう」


 近づいてくる。そっと顔を上げると、


 「みつけたよー」


 恐ろしい牙と黒の毛むくじゃらの身体がそこにあった。終わった・・・


 生にすがるように無様に逃げ出した。その滑稽を魔物は高笑いする。多分、遊んでいるのだろう。


 ゆっくり追いかけてくる。距離が少しずつ縮まり背中を鋭い爪でえぐられる。


 「うっあぁー」


 血が飛び散り倒れこむ。見上げるとそこには恐ろしい顔があり死が訪れるその瞬間、


 「アリウスーー!!」


 魔物が殴り飛ばさされる。そこには父の姿があった。とても大きく見えた。


 「大丈夫か?すまない。遅くなった」


 「こわかったよー」


 父の顔を見て涙がこぼれる。父の安心感はたまらなかった。しかし、魔物の悲鳴が鳴り響き、たくさんの魔物の群れが近づいてくる。


 「アリウス、このまま真っ直ぐ走って森を抜け

  ろ。村が見えてくる」


 「父さんは?」


 「魔物を引きつける。村に連れていくわけには

  いかないからな」


 「死んじゃうよ」


 「大丈夫。おれは最強の騎士だからな」


 そう父は言って魔物のほうへ走っていく。その背中はたまらなく大きく偉大だった。今でも覚えている。そして僕は言われたように走り出す。


 それから数日・・・


父は帰ってこなかった。僕は静かに父の部屋の扉を開ける。そこには小さな机とベッドだけあった。初めて入る。少し埃をかぶっているようで机をなぞると指が白くなる。机の引き出しをすっと開けるとそこに手紙が一通あった。ゆっくり読んでいく。


 「いつもおれの仕事を手伝ってくれてお前はと

  ても優しい子に育ってくれた。きっとあいつ

  ゆずりなのだろう。ありがとう。あとおれの

  夢を押し付けてすまなかった。本当は分かっ

  ている。お前の枷になっていること。自由に

  やればいい。やりたいことを。おれはそれを

  応援している。嫌な父だったと思うがお前は

  そんなおれみたいになるんじゃないぞ」


 涙が止まらなかった。僕のせいで死んでしまった。もっといっぱい話しをしとけば良かった。後悔している。でももう戻らない。そんな現実を受け止めながら部屋に置いてあった父の剣を握り騎士になることを決心する。

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頼りないのは自分のせいなのだから逃げてきたツケをそろそろ払っていただけますか? 海老衣揚 @430-515

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