スキルを確認しよう!

「んー」


 咲耶が私の顔を見つめている。えっと……スキルを確認するって言ってたはずなんだけど?


「いくら私の顔がいいからって話の流れをぶった切って凝視するのやめて」


「は? なに言ってんの? スキルの確認するって言ったよね? アイドルやってるからって自意識過剰すぎ。あ、自意識過剰じゃなきゃアイドルとか目指さないか。おっぱいが小さめなの気にして、Fカップ目指して色々調べて実践したけど成果なくて変わらずBカップの音芽お姉ちゃん?」


 うぐっ!? グサッときたんだけど!? 思わず胸を押さえて半歩後退った私。そんな私を見た咲耶から本気で呆れた様子が伝わってくる。ため息のひとつでも吐きそうな表情だ。


「……そこまで言わなくてもいいじゃん」


 自分の容姿にある程度の自信持っているのは事実だけど、胸のサイズのこともあって自意識過剰って言われるまでは酷くはないはず! こんなこと言葉に出すの咲耶に対してだけだし! ふたつ歳下のくせに私よりも大きく実りやがって――じゃなかった……他の人には間違っても言わないって! 自分から敵を増やすようなことするわけないよね!?


「馬鹿なこと言うのが悪い」


「咲耶ちゃん? ちょっと前の自分の姿を思い出そうか」


 私を抱き枕にするとか言ってたんだけど?


「お姉ちゃんを見てたのは、わたしのスキルを試しに使ってみたの」


「そうなんだ?」


 それなら最初から言ってほしい。そうすればこの無駄なやり取りせずに済んだ――今回に関しては私が余計なこと言ったのが原因か……。


「うん、わたし神様に色々とおねだりしたよね? なんか身に覚えがないスキルまでついてるみたいで……サービスしてくれたってことなのかな?」


「さぁ?」


 わからないけど……あの神様、なんだかんだ優しかったし、あり得なくはないかも? くらいには思える。


「わたし鑑定スキル持ってるみたいで、自分や他人のスキルも見えるんだよね」


「へー。私には何がついてるの?」


 普通に気になる。咲耶がサービスされてるなら、私も? そんな期待をしてしまう。


「神様が言っていた通りにアイドルスキルだね」


「ま、そうなるか。他には? こっちに送られる直前に戦闘スキルを頼んでおいたんだけど……何か付いてる?」


「付いてないよ。アイドルだけ。お姉ちゃんはもし戦闘になっても私が守ってあげるから大丈夫! もう人殺しの経験もあるし、人相手でも躊躇しないで戦えると思うから安心してね♪」


 どう考えてもにこやかに言うセリフじゃないのよ……。そして実際、咲耶は躊躇しなさそうなのがなんとも言えない……。


「私も身を守る程度には必要じゃない?」


「お姉ちゃん……咄嗟に変なポカしてあっさり死にそうだから戦闘スキルとか持たないほうがいいと思う。神様も同じく思ったからスルーしたんじゃないかな?」


「………………」


 ひ、否定できない……通り魔に襲われた自分を見てるときも、自身の行動にツッコミ入れたし……いくら反省していても、いざというとき行動に反映できるかと言われるとさ……だいぶ怪しい。悔しいけど咲耶の言い分が理解できてしまう。


「アイドルスキルの効果はっと……ライブを見たファンに身体能力向上。体力と魔力の回復速度アップってなってるね。生でライブを見ているときが効果最大で、時間経過で減少していくみたい。ファン度によって最大1日保つんだってさ」


 魔力……そっか、剣と魔法の世界って言ってたし、当然あるか。


「なんか安全なところでライブやってろって意図を感じるんだけど」


「気のせいじゃなくて、神様からのメッセージでしょ。ただこれ……使いようによっては最前線送りになるよね? ガッチリ守りを固めて、戦場で歌って声をファンの味方兵に届けられれば広域バフになるもん」


 咲耶の言葉で顔を見合わせてしまう。脳裏に扇動って単語が浮かんでしまった。恐らく咲耶も同じ単語が過っているはずだ。


「……これさ、戦争のある剣と魔法の世界で持ってちゃダメな部類のスキルじゃない? その気になれば扇動できそうだし……」


「お姉ちゃん? 戦場に行くの禁止で。普通にアイドルやってよ? それと間違ってもファンをアンチにけしかけちゃダメだよ? それも扇動でしかないからね? ほんとやめてよ? お姉ちゃんは図太いからアンチの存在なんて無視できるよね?」


 そこで言葉を切った咲耶だけど、飲み込んだ続きが簡単に想像つく。「またグサッと刺されちゃうからね? 魔法で燃やされたり、切り刻まれてるお姉ちゃんの姿なんて見たくなからね? わたしのトラウマ増やさないでよ?」


 こんな感じに違いない。でもその場合――私が咲耶の死ぬ場面を見てそうなんだけど……咲耶……ギリギリまで私の盾になりそうだし。


 そしてアンチに関しては、ゼロにするのはどう考えても不可能だもんね……咲耶の言う通り受け流すしかない。幸いにしてこんな性格だし耐える分には問題な――直接何か言われたりしたら言い返しそう……咲耶の心配の源はそこだろうなぁ……。


「しないから!! 私を何だと思ってんの!?」


「美人系のアイドル♡」


「……」


 やっば、ほっぺた熱い。これ赤くなってそう……。


「あ、照れた」


「うっさい!」


「むっ」


 一転して不機嫌そうに唸る咲耶。


「こ、今度はなに?」


 咲耶は元々表情が豊かなタイプだけど、ここまでコロコロ変わるのは珍しい。


「お姉ちゃん……称号が付いてるね。不幸の星と、人運、それと魅了(同性)のみっつ」


 効果は聞かなくても想像つくなぁ……。咲耶が機嫌を損ねた理由が魅了(同性)だってこともわかる。これ、日本でも付いてたのかな……それぞれ思い当たるフシがあるし。それにしても魅了かぁ……それも同性に対する、ね。何人かやたらベタベタしてくる友達居たもんなぁ……本音を言えば魅了なんていらないけど、アイドルとして同性に好かれるのは悪くないのよねぇ……。咲耶みたいなのが寄ってくるのは頭痛いけど、同性を敵に回すよりはよっぽどいい。


 あと神様が戦闘スキルをくれなかった理由……確実に不幸の星でしょ……。そんな人間に戦闘させちゃダメなのは素人だってわかる。というか……魂の洗浄目的でこっちの世界に来たのに残ってるじゃん……いや、日本ではもっと付いてた可能性もあるか……それこそ輪廻関連のやつ。これでもマシになったってこと? それはそれで嫌だなぁ……。


「……ちなみに咲耶にはどんな称号が付いてるの?」


 スキルも気になるけど、そっちのが興味深い。


「わたし? シスコンって称号が付いてるよ♡効果は、お姉ちゃんが近くに居ないと能力低下するみたい。だからお姉ちゃんはいつも一緒に居て欲しいなぁ♡」


「…………そっすか」


 シスコン呼ばわりに嫌がるどころか嬉しそうに内ももをすり合わせている咲耶。最早なにも言うまい。


「スキルはまず勇者でしょ? 人物判断、鑑定、姉妹愛に――」


「待ったストップ。シスコンと姉妹愛は別なの?」


「そうみたい。姉妹愛は、お姉ちゃんを守るために戦うとき戦闘能力が大幅アップするみたい」


「へー」


「あとアイドル親衛隊とアイドルの付き人。前者がアイドルを守るために戦う際戦闘能力大幅アップ。付き人のほうは、自分の魔力を使ってアイドルが求めるモノを生成できるってなってるね。これが神様に求めた日本のモノを得られるスキルってことになるみたい」


「つまり咲耶には魔力があるってことよね?」


「そうなるね。試してみる?」


 アイドルの付き人の効果をってことだよね? 賛成するに決まっている。ついでに勇者スキルってことは咲耶は魔法も使えるのかな? そっちも気になるなぁ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る