「逃げられるばしょでしばられたい僕」

エロティックなまじめ子

第1話「逃げられるばしょでしばられたい僕」

彼女になら……





僕のすべてを見せたいと思った。






格好つけた顔も

外では言えない弱さも、

誰にも見せずにしまい込んできた欲も。






彼女になら、隠さなくていい。





そう思える場所は、

いつの間にか、ここだけになっていた。







店に向かう足取りは、

もう「緊張」じゃない。






仕事帰りに家へ戻るときの、

あの感覚に近い。






――あぁ、帰ってきた。

そう、心が先に言ってしまう。







彼女は多くを聞かない。

それが、ありがたい。

説明しなくても、

全部わかっている顔をするから。







マットに横たわり、視線が合うだけで、

胸の奥が緩む。







「今日も、ちゃんと戻ってきたわね」

その一言で、






一日分の自分が、ほどけていく。






ここでは、







頑張らなくていい……強がらなくていい……







主導権を握らなくていい。







依存しているのかもしれない。



ふと、そんな言葉が浮かぶ。








でも、怖くはなかった。

だってこれは、

奪われる依存じゃない。






自分から、帰ってきているだけだ。

彼女の声に、彼女の間に、

僕は、少しずつ形を失っていく。








それが、心地いい。






「ほら、力抜いて。

私には全部見せなさい」







その言葉に、

胸の奥で何かが崩れる。







ああ、見せたい。








いいところだけじゃなく、

情けないところも、

どうしようもない欲も。

彼女になら。

彼女にだけは。

終わったあとも。








すぐには立ち上がれない。








帰る場所に、

長く居座りたくなるように。








ここは、

僕が僕に戻る場所。







そしてきっと、

僕が、手放していい場所。


𓈒𓏸𓈒꙳𓂃 𓈒𓏸𓈒꙳𓂃 𓈒𓏸𓈒꙳


大丈夫。

依存しても、壊れない。

彼女は、

帰る場所として、

今日もそこにいる

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