正しさの犠牲
櫻 まこと
正しさの犠牲
なんで家族に相談しないの?
悪意なき言葉だからこそ、刺さる。
恵まれてるのに、恵まれてるって言えない自分が一番嫌い。
父、母、妹、それぞれ1人ずつ。そして犬、お祭りで買った金魚一匹ずつ。なんの変哲もない普通の家族ーーーに見えるだけ。
結婚記念日の家族写真、今年で30枚目。形だけなんて消えちまえばいい。
-ーー体を触られた。
2人になるタイミングを見計らい、誰も見えないところで触られた、何度も。
震えながら母に言う。
母なら味方になってくれると信じて。
「なんで叫ばなかったの?叫べばよかったのに」
「あんたが近づくからでしょ。近づかないの!」
西日に照らされた母の顔は鬼のように歪んでいた。
全部、全部私が悪いって。
私の中で何かが崩れ落ちた音がした。
私はどんな顔をしていただろうか。
「妹じゃなくてよかったわ。」
「ただ話を聴いて、否定しないで聞いて欲しい。」
私は叫んだ。
声色も変えず、呟く
「私はそういうふうに育てられていないから。」
換気扇からカレーの匂いが漂う。私はそんなふうに育ってやらない。
彼女は、正しさの犠牲者なんて知らない。
知らないふりのまま。
きっとこれからも。
それでも、共に生きてく。
正しさの犠牲 櫻 まこと @Sakurarose0928
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