ヤンデレ好きな俺 ヤンデレらしい妹

夢乃間

第1話 見つかった


【今週の運勢は最低最悪! ラッキーアイテムもラッキーカラーも効果がないよ~!】




 占いでここまでイラつかせるのは才能だろう。どんなに悪い結果だとしても、最後にアドバイスがあるのが定番だが、下にスクロールしても広告しかない。




 まぁ、興味本位で占っただけの事。本気で信じる必要はない。




 コンコン。




 部屋の扉をノックした音に返事を返すと、半端に開いた扉の隙間から妹のアイリが顔を覗かせてきた。




「ちょっといい? 話したい事ある」




「なに? 晩ご飯の事なら、出前でも取ろうと思ってたけど」




「パパもママも今日は帰らないんだっけ? まぁそれはそれとして。聞きたい事があるの」




 アイリは部屋に入ると、手に持っていた本を俺に見せつけてきた。




「これ……なに?」




 アイリが顔をしかめて持っている本は、俺がネットで買ったヤンデレヒロインの漫画本だ。若干のエッチ要素はあるものの、中身は普通のラブコメ。見つけられたところで、恥ずかしくもないし、個人の趣味に文句を言われる筋合いは無い。




 ただ、その漫画本には問題がある。とんでもない誤解を生む問題だ。




「【ヤンデレ妹に愛されて幸せな日常を送ってます】ね。なにこれ?」




「……いや、別に。ただの漫画だよ」




 アイリは俺の前で漫画本を開くと、とあるページで止めて、俺の顔に突き付けた。




「これの何処がただの漫画なの?」




「近くて見えないよ……」




 見ずとも何処のページに文句を言ってるのか大体の予想はつく。




 そのシーンとは、漫画の主人公がヤンデレ妹とキスをするシーン。最初からちゃんと読めば、ヤンデレ妹の長年の想いが成就した感動的なシーンなのだが、兄妹物の本に馴染みが無い人物が見れば、とんでもないシーンだ。




 特にマズいのは、現実に妹を持つ人間がこの漫画を発見された時だろう。




 ハハ、俺じゃん。




「まさかとは思うけど、私に対する願望じゃないでしょうね?」




「滅相もない。現実とフィクションは弁えてるつもりだよ」




「……フン。こんな本持っておいて、説得力無いよ」




 アイリは俺の顔に漫画本を被せたまま、部屋から出ていった。




 まさか実の妹に見つけられるとは。こんな事になるのなら、ベッドの下じゃなく、ちゃんと隠しておけばよかった。そう、例えばベッドの下とかに―――




「―――なんでアイツ、俺のベッドの下を探ったんだ?」

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