飛び込み自殺

千夜 褪寡

第1話

「危ないですから黄色い線の内側までお下がり下さい」

 お馴染みのアナウンスが耳に響いた。

 その瞬間、「ドン!」という音が、身体全体に地響きほどに響き渡った。

「キィーン!」

 ブレーキ音が身体に鋭く響いたが、それは無意味だった。

 電車の下には真っ赤な血が鮮明に彩られ、顔面が跡形もなく崩れた死体。

 その死体の周囲には肉片が飛び散り、骨が露出し、内臓が鉄の匂いを放ちながら地面に広がっている。

 通行人の悲鳴が駅構内に木霊し、誰もが目を背ける中、スマートフォンで撮影する者。

 駅員が駆け寄るが、すでに手遅れだった。

 太陽は燦々と燃え、相変わらず人を温めていく。

 だが、その光は地に濡れたホームをより鮮明に照らし、現実の残酷さを際立たせていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る