ココロ⇔ジュエル・コネクト!!【短編版】
秋野凛花
プロローグ 平和な朝の夢
業火の中を、1人の少年が駆け抜けていた。
炎に焼かれて、見知ったものは何もなくなってしまった。お気に入りの店も、誰かが大切に育てていた草木も、秘密の抜け道も。
だが全てが滅んだわけではない。ここに住んでいた人たちは全員、国の中心の城に避難している。少年は逃げ遅れた者がいないか、こうして確認しに来ていた。
「ジュエル・コネクト! エクステンド・ウェーブ!」
少年は持っている杖を構え、そう叫ぶ。すると杖の先から青色の光が迸った。
光の波が広がる。広がった先の光景が見える。見知った国の無残な姿に頭が痛くなるが、ひとまずここら一帯に逃げ遅れた人はいないようだ。
それを確認し、彼は踵を返す。目指すは国の中心。大きくそびえ建つ城だった。
「リイ! 無事か!?」
「お兄様……私の力でひとまずは防がれていますが、そう長くはないでしょう」
「そうか……」
城に入り、真っ先に見えるのは彼の妹であるリイの姿。ヴェールに覆われその顔をはっきりと見ることは出来ないが、その憂いはひしひしと感じることが出来た。
この城は、ひいて国は、妹のリイの力により守られている。だがそんなリイの力を持ってしてでも、街は堕ちてしまった。城も堕ちれば、それは国の滅亡を意味する。
どうする。残された時間はきっとそう多くはない。自分が捨て身で特攻するか? 否、それで敵の戦力を削りきれなかったらどうする。リイは既に頑張っている。頑張りすぎなくらいだ。国が堕ちたら、国民は、リイは……。
「……お兄様」
ハッ、と顔を上げる。視線の先、そこには何か覚悟を固めたようなリイがいた。
「リイ……?」
「私は力を使い、この城を完全に封印します。そうすれば敵の侵入も抑えられ、時間はかなり稼げるはずです」
「ッ!? リイ、それは……!」
「お兄様、任せたいことがあるのです。きっとどこかにいるはずの、この
それは、仮死状態になることを意味する。封印を解いても、万全な状態に戻るか分からない。だが少年がそう言う前に、リイは少年にそう頼んでしまった。
その手にあるのは、宝石箱。1つだけ抜かれた状態で、残り6つの宝石が輝いている。
リイの体が光り出した。それは瞼の裏に焼き付くほどの激しいもので、リイの覚悟を伺わせた。
「待て! リイ! 俺は……!!!!」
「信じ……おります……──ンお兄様」
リイを中心に吹き荒れる風で、上手く声が聞こえない。光が迸る。弾けて、拒絶する。彼女が受け入れたもの以外を。
そして少年は、拒絶された。
「ぐあっ……!!!!」
その衝撃に耐えきれず、少年の体は宙を浮く。城の外に投げ出され、目の前に映るのはクリスタルに覆われた城。そして6つの輝く宝石だった。
思い思いに輝くそれは、意志を持って離散する。もちろん少年に追いつけるわけがない。
……そして中でもひときわ輝くのが、赤色の宝石。物凄い勢いでこちらに迫り、視界を覆って──。
──ゴチンッ!!!!
「いっ……たぁ〜〜〜〜っ!?」
光がぶつかると思った瞬間、
あ、夢か。ルアがそう悟ると同時、響き渡る声が1つ。
「瑠愛ー!? いつまで寝てるの!!!! 遅刻するわよ!?」
ごく普通の高校生にとって、母親の声は業火よりずっと怖い。急激に覚醒した頭を使い、ルアは慌てて枕元にある目覚まし時計を手に取つた。
「ちっ、遅刻だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?!?」
……爽やかな朝、ルアのそんな悲鳴が、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます