異世界チートは3分間

魔王城にて……

「くっ！この我が敗れるのか……」

「自分こそが最強だとでも思ってたのか？残念だったな！上には上がいるもんだ！」

「ここまでか……」

「あっ！やべ……。皆！後は何とかしてくれ！」

急いで転移魔法陣を展開する。

俺はそのままその場から姿を消した。

「おい。どうすんだよ？魔王は手負いだけど今の俺達だけで勝てるのか？」

「えっと……。た、退却するわよ！！」

「に、逃げろーーー！！！」

残りの勇者パーティーは脱兎の如く逃げ出した！

「……一体何なのだ？」

「魔王様、ご無事でしたか！！」

こうして、魔王は一命を取り留めた。

王都リンデブルグの酒場……

「皆、今回は惜しかったな！

「……トモヤのそのスキル何とかならないの？」

「強いのは認めるけど、幾らなんでも短すぎるだろ……」

「途中で僕達が消耗しすぎてましたからね」

「そんな事言われても……。しょうがないだろ！そういう仕様なんだから！」

「逆ギレは見苦しいわよ」

「最後の一言が余計だったよな」

「高笑いしてましたもんね」

「だって！倒す前に敗けを認めさせる方がカッコいいだろ？」

「そのせいで人類の悲願である魔王討伐に失敗したんだけど？」

「うぐっ……。悪かったよ」

「次は俺達も余力が残せる作戦を立てないとな」

「僕達3人で魔王に辿り着くまでの敵を全部倒したのに？」

「…………」

「…………」

「……パーティーメンバーを増やそう！持久力がある奴を勧誘だ！」

「それしか無さそうですね」

「ギルドに行ってみるか？」

「戦闘奴隷を買うってのは？」

「……最低」

「戦闘って言ってるじゃん！？」

「何の戦闘なんだか……」

「？？？……皆さん、何の話ですか？」

「ミオンは知らなくて良いわ。貴重な純真無垢枠なんだから」

「ほうほう♪サーシャはご存知のようで♪」

「……最低。セクハラを理由にパーティーを脱退させて貰うわ」

「じょ、冗談だよ！サーシャが居てくれるからこのパーティーはここまで強くなったんだ！サーシャ以外には考えられない！」

「暑苦しいから止めて頂戴！」

「……で、どうするんだ？奴隷を買うのか？」

「戦闘奴隷でもどうせなら女の子が良いなあ」

「あんた本当に勇者？」

「ムカッ！その『本当に勇者？』に敗けたのはどこのどなたですかね～♪」

「イラッ！表に出なさいよ！ボコボコにしてあげるわ！」

「いや、明日なら良いぞ！」

「スキル使われたら勝てないでしょうが！今日よ、今日！」

「それだと俺がボコボコにされるだろうが！」

「不毛な争いですね……」

「取り敢えず明日は奴隷商館に行くぞ」

ガインがその一言で場を収める。

食堂を出た俺達は各々の宿に帰った。

「何だよ！魔王を追い詰めただけでも凄い事だぞ！もっと褒めてくれても良いじゃんか！」

歩きながら愚痴を溢す。

まあ、魔王の所に辿り着くまでは後方待機だったんだけどさ……

因みに先程の仲間との会話でもあったように、俺のスキルは魔王を追い詰める事が出来るほどに強力だが、如何せん時間が短い。

何処かの星人の如く3分間だけ超人になれる。

俺がこの世界に転移した時に授かったチートスキルだ。

……これはチートと言えるのか？

しかも1日に一回しか発動出来ず、スキル発動時以外はただの凡人に戻るという鬼畜仕様だ。

使いどころを見極めないと普通に死にます。

なので、今のパーティーには凄く感謝しているし、スキルを有効活用し多大なる成果を上げてパーティーに貢献しているつもりだ。

今日みたいな言い合いもあったりはするが、基本的には仲が良い理想のパーティーと言えるだろう。

そうだ。ここで俺以外のパーティーメンバーの紹介をしておこうと思う。

サーシャは魔法使いで『大魔導』と言う称号を持っている。

色んな攻撃魔法が使えるし、状況判断も正確でパーティー内のブレインと言った所だ。

ふんわりとした長い銀髪と切れ長の真っ赤な瞳が特徴で、普段の凛々しい顔に対して笑うと物凄く可愛い！

出会い方は特殊だったが、サーシャと一緒に旅が出来るだけでもこの世界に来て良かったと思える程だ。

彼女の気を引きたいばかりに余計な事を言ってしまう事も多々あるけどな……

ガインは筋骨隆々の体躯で『破壊者』の称号を持つ武闘家。

ミオンは『奇跡の癒し手』の称号を持つ神官だ。

2人の紹介が雑？

サーシャの可愛さを伝える事の方が重要だから仕方がない。

因みに絶賛片想い中なので、皆応援してくれよな！

……と言う自分語りを終えた所で、人気の無い路地に入った。

他の皆は周りの治安が良い値段が高めの宿屋を利用しているが、俺はお金を貯めるために格安の宿屋を使っている。

お金を貯める理由？

そんなの言わせないでくれよ……惚れた女のためさ！

あともうちょっとで目標の金額が貯まりそうだから頑張らないと……

サーシャが欲しがってた超高価な杖をプレゼントする予定なのだ。

「きゃあああああ！！！」

その時、女の子の悲鳴が聞こえた。

治安が悪いこの区域では日常茶飯事ではあるが、一応様子を見ようと声のした方へ急ぐ。

曲がり角を曲がって目に入ったのはゴロツキ共に囲まれている小さな女の子だった。

「やめろ！」

思わず叫んでしまったが、今日はもうスキルは使えない。

日が変わるまでまだ時間があるし………どうしようか？

「何だ、てめえは？」

「衛兵を呼んだから早く逃げた方が良いぞ」

「ちっ！余計な事を……。おい、お前らずらかるぞ！」

ゴロツキ達はそそくさと逃げて行った。

ハッタリが効いて良かった。

最悪、俺が更に悲鳴を上げて助けを求める所だったぜ。

「大丈夫か？」

「あ、ありがとうございます。では……」

女の子もお礼を言うとそそくさと去って行った。

……まあ、見て見ぬ振りなんてしても気持ち良く眠れないからな。

宿に着いたら体を拭いてベッドに横になる。

元の世界の布団が恋しくなるが、我慢して無理矢理眠った。

明日は奴隷を買いに行くんだったな。

出来れば女の子で強い奴隷がいれば良いんだが……

翌朝……

「皆、おはよう！」

「ふわぁ～。まだ眠いんだけど」

「相変わらず夜遅くまで研究してるのか？」

「僕も夜遅くまで祈ってますけどね！」

朝からサーシャの欠伸が見れるなんて、今日は素晴らしい1日になるに違いない！

ガインが言うように、サーシャは今でも十分に強いが自身の成長のために努力を欠かさない。

そんなストイックな所も彼女を好きな理由である。

ミオン？好きなだけ祈ってくれ。

「どこぞの最低勇者に勝たなきゃいけないからね」

「最低勇者か……この世界にはそんな奴も居るんだな」

「あんたの事よ！」

「お、俺？最強勇者の間違いだろ！昨日は魔王を追い詰めたんだぞ！」

「倒さなきゃ意味が無いのよ！」

「結果だけを追い求める人間にはなるなって、ばあちゃんに言われてたからな」

「じゃあ、今から死んで生まれ変わって頂戴！」

「それは酷くない！？」

「朝から何やってんだよ……」

「人に見られてますよ～」

だが、こんなやり取りが楽しかったりする。

奴隷商館に行く前に、先に冒険者ギルドに立ち寄った。

現状では強い奴は何人でも必要だ。

同じ失敗を繰り返さないようにしないとな。

カランカラン♪

ギルドのドアを開けると俺達に視線が集まる。

「おお！あとちょっとで魔王を倒せたパーティーが来たぞ！」

「そうそう！俺もこの前あとちょっとでドラゴン倒せたんだよな～♪」

早速野次が飛んで来た。

「ふんっ！実際に追い詰めはしたんだがら、あなた達が喚いても獣の遠吠え以下にしか聞こえないわよ！」

「何だと！俺達とやってみるか！？」

「じゃあ、特別に俺が相手してやるよ」

「ガイン……。悪い、ただの冗談だよ」

実際にはガインよりサーシャの方が強いのだが、こう言う荒事には見た目的に強者のガインが役に立つ。

「あんたも言われるばっかりじゃなくて言い返しなさいよ！」

「サーシャ達が本当の事を知ってくれているだけで十分だよ♪」

「……その笑顔、キモいわ」

「……まあ良い。早く募集出しに行くか」

まだ罵倒を快感には感じないが、その内どうなるかは分からない。

この病は治る見込みも無いしな……

「では、張り紙をしておきますね♪トモヤさん、次は頑張ってください！」

「ああ。ありがとう」

ギルドの受付嬢に募集の依頼を出した。

「なに鼻の下伸ばしてんのよ！」

「伸ばしていないが？」

「伸びてんのよ！鏡でも見て来なさい！」

サーシャに言われたのでギルドのトイレに行って自分の顔を確認する。

ニヤつく顔は抑えられていただろうか？

自分でも思うが本当に重症だな……

「悪い。イケメンに見惚れてて遅れた！」

「えっ！どこに居るの！？」

「目の前に居るじゃん？」

「……魔王の呪いで視覚をやられたのね。私の魔法で衝撃を与えれば解呪出来るかも知れないから、後で一発お見舞いするわ」

「……ごめんなさい」

「お前ら本当に何やってんだよ……」

「早く次に行きましょうよ！」

男2人に呆れられながら奴隷商館を目指す。

この王国は奴隷制度が認められており、人々の生活にも溶け込んでいる。

勿論、主人に対して危害を加える場合などは強制的に従わせると言った側面はあるが、基本的には労働力の確保や専門的な分野での知識の活用などがメインで、奴隷だからと言って雑に扱われたり虐待されたりと言った事例は稀みたいだ。

まあただ、昨日の会話のようなそれ専門の奴隷も一定数の需要があったりもする。

要は奴隷の種類も千差万別と言う事だ。

「強い奴隷だと高くつきそうではあるわね」

「パーティーの資金で足りると良いが……」

「神を信仰している人を選びましょう！」

「居ないだろ……」

奴隷商館に着くと派手に着飾った案内係りが現れ建物の中に通された。

「今日はどのような奴隷をご所望でしょうか？」

「えっと、とにかく戦闘が得意で強い奴隷が欲しい」

「出来ればイケメンね♪」

「……最低だな」

「あんたに言われたく無いわよ！どうせ可愛い女の奴隷とイチャイチャしたかっただけでしょうが！」

「俺だって昨日宿に帰って反省したんだ。サーシャ達ばかりに負担をかけて申し訳なく思ってる。昨日の事は馬鹿野郎の戯れ言だと思ってくれて良い」

「な、なによ。私も冗談で言ったつもりだから真に受けないでよね！」

「ああ。サーシャ、ありがとう♪」

「今のやり取り絶対意味無いだろ……」

「早く話しを進めましょうよ！」

「こ、コホン。では戦闘が得意でとにかく強い奴隷を選んで連れて参りますので、暫くお待ち下さい」

奴隷商人が退室し時間が空いた。

「どんな奴が来るんだろうな？」

「奴隷なんて買うの初めてだから分からないわね」

「奴隷なんて神の意思に反します！」

じゃあ、最初から反対してくれよ……

そして、奴隷商人が連れて来た錚々たる面々……

その中で最初に入って来ていた特に異彩を放つ人物に話し掛けた。

「物凄く強そうだけど、実際はどうなんだ？」

「強そうではない、私こそが最強だ」

それだと、何故奴隷なのかが理解出来ないが……

「奴隷になった理由があるの？」

「ああ。罠に嵌められたのだ！まさか声をかけて来た女が貴族の令嬢だとは誰も思うまいよ」

それって所謂美人局じゃ……

しかも捕まってる時点で最強とは言えないだろう。

「ふ～ん。分かったわ。じゃあ、次の人は？」

サーシャは全員確かめるらしい。

隣の男の奴隷が自分アピールを始めた。

「俺を買ってくれたら色々と重宝すると思うぜ！何せ奴隷になる前は世界一の暗殺者だったからな！」

だから捕まってる時点で(以下略)……

「俺はその隣のガタイが良いのが気になるな」

「筋トレこそが正義！筋トレが全てを解決してくれるんだ！」

「対人経験は無しか……」

気にする所が違うよ！？

「この中で神に祈っている人はいますか？」

誰も反応無しだ。当たり前だが……

そして、俺は一番最後に入ってきた存在感が薄い女の奴隷を見やった。

わざと気配を抑えてるのか？

あの状態には俺も覚えがある。

学校の授業なんかで先生に当てられるのを回避したいがために、存在感を必死に隠そうとするあれだ。

実際は何も変わらないのだが……

「まさか本当に女の子の奴隷を買うの？」

サーシャが呆れているが、女の子の奴隷を買いたいのには理由がある。

それは………サーシャの護衛をして貰いたいのだ。

魔王を追い詰めた事によって、今後は暗殺などの危険も考慮しなければならないだろう。

パーティーで行動する分には問題ないが、やはり1人になる瞬間など日常生活では多々ある。

その内の少しだけでも同じ性別の奴隷を買う事で補えたらと思ったのだ。

まあ、一番危険なのは俺だけどな！

「ダメかな？」

「……俺は良いと思うぜ。トモヤの考えも想像が付くしな」

「どうせエッチな事でしょ？」

「まあ知らない方が良い事ってのも世の中にはいっぱいあるってこった」

ガインにはバレバレのようだ。

サーシャにシンプルに護衛を付けたいと伝えた所で承諾する訳が無いからな。

「み、ミオンはどうなの？」

「貴女は神の存在を信じていますか？」

「……はい。一応」

「僕この人が良いです！」

結局、多数決で購入が決まった。

「それじゃあ、彼女を買いたいんだが……」

「私からも1つ良いですか？」

いざ買おうとすると、奴隷の女の子が聞いてきた。

「どうせ買われるなら自分より強い人と決めてるんです。あなた方は私より強いですか？」

彼女の問いに部屋の空気が変わる。

空気に質量が発生して全身が重くなったような錯覚に陥る。

「ふ、ふ～ん。なかなかやるみたいね」

「これだけの殺気……俺より強そうだな」

「あわわわわ！」

俺は全く体を動かせなくなっている。

皆が言うようにかなりの実力者なのだろう。

「ならどうするの？あなたと勝負して負かせば良いのかしら？」

「そうですね。私は誰でも良いですよ。貴女ですか？それともムキムキのお兄さん？」

「私達のパーティーで一番強いのはトモヤよ。魔王を追い詰めたのも彼だし」

「……舐められたものですね。そこの冒険者気取りの一般人が私より強い？」

「言い方酷くない！？」

「戦ってみれば分かるわよ。私だって手も足も出なかったんだから……」

「分かりました。こんな茶番は早く終わらせましょう。ご主人様、準備をお願い致します」

茶番って言われた……

「ああ。それでは条件の確認ですが、こちらのトモヤ様とイリスが勝負してトモヤ様が勝てばイリスは素直に彼の奴隷になる。イリスが勝てばこの取り引きは無かった事に致します」

「それで良いわ。実際は勝負するだけ時間の無駄だけどね」

「確かにそうですね」

「あの嬢ちゃん、違う受け取り方をしてやがるな」

「トモヤさん。余り大きな怪我はさせないで下さいね」

「ああ。それは問題ない」

「じゃあ、トモヤ頼んだわよ。あんたがいつも言ってる、上には上がいるって言うのを彼女に教えてあげて」

「了解した」

さて、やるとしますか！

地下闘技場……

「悪い事は言いません。怪我をする前に辞退した方が良いと思いますよ」

「心配いらないよ。それより遺恨を残されると面倒だから全力で頼むよ」

「……分かりました。骨の数本は覚悟して下さいね」

一応、審判はガインに頼んだ。

両者とも手には稽古用の木剣を持っている。

俺は開始前にスキルを発動した。

スキルを発動する前に一瞬でやられたら目も当てられない。

「それじゃあ、始め！」

「………………嘘でしょ」

イリスはスキルの発動に気付いたようだ。

俺は『瞬間転移』でイリスの背後に移動する。

「くっ！」

気配で気付いたのか、イリスは振り向き様に木剣を振るった。

流石に反応されるか……

『時間停止』

世界の時が3秒間停止する。

俺はイリスの剣の軌道を避け、木剣の柄頭で軽くイリスの腹を叩いた。

因みに残念ながらこの3秒も3分間にカウントされてしまう。

ドゴン！！

イリスは吹き飛び闘技場の壁に背中から叩きつけられた。

「がはっ！」

そのまま地面に滑り落ちて行く。

しかし、その瞬間イリスの姿が消えた。

バキッ！

『自動反撃』でイリスの木剣が届く前に俺の木剣がイリスの横っ面を叩き付けた。

その刹那、イリスは勢いを緩ませずに剣を振り抜く。

だが、イリスの木剣は俺の体を素通りした。

そのままイリスは再度吹き飛ぶ。

基本的に『次元ずらし』で一切の攻撃が当たらないし、もしも当たったとしても『金剛体』でノーダメージだ。

実は先程の『時間停止』はただのパフォーマンスだったりする。

「い、意味が分からないわ！？」

即座に立ち上がったイリスが叫んだ。

じゃあ、もうちょっと理不尽を味わって貰おうかな。

「『対象具現化』『マリオネット』『感覚共有』」

「か、体が……」

「痛いけど我慢してくれ」

俺の目の前にはイリスを小さくしたぬいぐるみが浮いている。

俺が木剣を剣先をぬいぐるみの腹に沈めるとイリスが苦悶の表情を浮かべた。

「ぐっ……う……。ま、まさか。それが……」

ぬいぐるみの両足に木剣を思い切り叩き付ける。

「ぎゃあああああ！！！」

イリスは立っていられなくなり、地面に頭から突っ込んだ。

「あっ……。あ…………………」

俺は掌に超高温の火の玉を発生させる。

それをぬいぐるみに近付けた。

「熱い！いや！お願い！」

「じゃあ、さよならだ」

ぬいぐるみが火達磨になる。

因みに、対象との『感覚共有』は既に切っている。

「いやあああ！！！」

幻痛が起きているのか、熱くは無い筈なのに苦しむイリス。

ちょっと可哀想だな。

思い切って気絶させてあげよう。

『瞬間転移』でイリスの横に移動した。

イリスの頭を髪ごと持ち上げて地面に叩きつける。

「あ、い……や」

抵抗しても無駄なのにな。

もう一度持ち上げて叩き付ける。

「………………ふっ。………ふっ」

まだ意識があるのか？本当にしぶとい。

もう一度………

「トモヤそこまでよ！」

サーシャの声で我に帰る。

どうやらやり過ぎてしまったようだ。

魔王の時もそうだったが、スキルに残虐性を増す効果でもあるのかも知れない。

「トモヤさん。やり過ぎですよ！」

「でも、戦意を喪失させるにはあれくらいは必要だったと思うぜ」

ミオンが慌ててイリスに駆け寄り、傷を回復させる。

「サーシャ、思い切り頬をひっぱたいてくれないか？」

「どうしたの？」

「良いから、頼むよ」

「……分かったわ。いくわよ！」

バシン！！

スキルの効果が切れていたので、頬に痛みが走った。

良かった、いつも通りだ。

「サーシャ、ありがとう」

「無理しなくて良いからね。嫌な役回りばかり押し付けてる気がするし」

「日頃は守られてばかりだからな。少しくらいは貢献させくれ」

「少しどころか十分に貢献してるわよ。……で、何で急に奴隷を買おうなんて言い出したの」

「女の子の奴隷だったらさ。サーシャの護衛を安心して任せられるだろ？」

「……本当にもう。でも、心配してくれてありがと♪」

「……やっぱりサーシャは世界一可愛いな」

「キモいからそういう事言うのやめてね」

「この流れでもダメか……」

「私だって人からの好意に気付かない程鈍感じゃないわ。でも、暫くは片想いで頑張りなさい」

「し、暫くとは？」

「う、煩いわね！あんまり鬱陶しいと50年後とかにするわよ！」

「全然待ちます！！！」

「本当にこの男は……」

「……なあ。イチャイチャするのやめて貰って良いか？」

「もう治療終わってますから！」

「「ごめんなさい」」

その後、正式にイリスを仲間に加えたが、イリスは俺を見ると怯えるようになってしまった。

イリスにはサーシャの護衛を頼んで常に側に居るように頼んだ。

これで先ずは一安心だ。

そう、俺のスキルは1日1回3分間の超限定的な諸刃の剣だ。

使用時は最強になれるのがその不安定さを増している。

だけど、これからもこのスキルを使ってサーシャやパーティーメンバーを助けて力になりたいと思う。

「どうしたの？いつにも増して馬鹿みたいな顔してるわよ」

「おい、ガイン。無視したら可哀想だろ？」

「あんたよ、あんた！いいからちょっと鏡見て来なさいよ！」

「鏡が俺のイケメン具合に耐えられるかどうか……」

「はっ！全世界のイケメンに謝りなさいな」

「そうだな……。ごめんな、俺」

「ウザッ！あんた本当にウザいわよ！」

「まだ罵倒は気持ちよくならないな……」

「(私なんでこんな奴好きになっちゃったんだろ……)」

「何か言ったか？」

「何でも無いわよ、馬鹿！」

「こんなやり取りを頻繁に聞かされるのですか？」

「そうだよ。あ～俺も彼女作ろうかな～。チラッ、チラッ」

「私がガインさんに靡く事はありませんので……ごめんなさい！」

「……いや、何か俺の方こそ悪かったな」

「僕はガインさんの事好きですよ！」

「男に好かれてもなあ……」

「えっ？僕、女ですけど……」

「……………」

「……………」

「……………」

「「「えええええ！！！！」」」

そんなこんなで、俺達の旅はまだまだ続きそうだ。