理解されぬ覚悟ほど、美しいものはない

この物語は実に興味深い。
悪役として生きることを運命づけられた男が、善を積み重ねた結果、かえって世界を滅ぼしかねない存在となるとは……皮肉としては上質だ。

主人公は理解したのだ。
自らがどれほど「良き人間」であろうと、
この世界が求めるのはそれではないということを。
ゆえに彼は、汚名をすすぐ道を自ら閉ざし、再び悪を装う。
それは服従でも堕落でもない。選び取った自己犠牲だ。

だが、事態をより面白くしているのはヒロイン達の存在だろう。
彼女達は見ていたのだ。
悪役に戻ろうとする主人公の、その不格好な振る舞いの奥に、かつてあった優しさを。

本作の美点は、善と悪を役割として描ききった点にある。
主人公は悪を演じ、ヒロイン達はその嘘を見抜きつつも否定できない。
実に歪で、実に人間的だ。

フフ……
この物語は、実にいいものだ。