白雪の娘

星見守灯也(ほしみもとや)

白雪の娘

 あるとき王妃さまが言いました。


「雪のように白い肌で、血のように赤いほおの、黒檀のように黒い髪の女の子が欲しい」


 しばらくして、ある雪の日にそのとおりの女の子ができました。

 王妃さまは「白雪姫」と名づけました。

 ところが、その後すぐに王妃さまは亡くなってしまいました。




 さて次の王妃さまはひとつの鏡を持っていました。


「鏡や鏡。国中で誰がいちばん美しいか言っておくれ」

「あなたこそ、いちばん美しい。でも、あの白雪姫はきれいになりますね」


 王妃さまは怒りました。

 白雪姫はまだ赤子でしたが、自分より美しくなると知っては放っておけません。

 狩人に命じて森に捨てさせました。




 狩人は赤子を殺したくはありませんでしたが、自分で育てることもできません。

 森の中にひとつの家を見つけました。

 七つあるベッドは小さくて、赤子の大きさにぴったりでした。

 まだ雪が残っていましたが、狩人は赤子を置いていくことにしました。




 それからしばらくが経ったある春の日のこと。

 王妃さまは美しくなると騙されて、毒のあるリンゴを食べ、死にました。

 狩人は白雪姫のことを思い出し、森へ探しに行きました。

 白雪姫は七人の小人にそだてられていました。


「悪い継母は死んだのだ。城に帰るのがいいだろう」


 小人たちは反対しましたが、狩人は白雪姫を連れて森を出ました。




 その日は夏のように暑い日だったのです。

 馬の上で、白雪姫は小さく小さくなって溶けるように消えてしまいました。

 あとには冷たい水たまりが残っただけでした。


 白雪姫は雪の精に願った子だったので、雪でできていたのでした。

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白雪の娘 星見守灯也(ほしみもとや) @hoshimi_motoya

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