プロローグ「VS最強勇者」 中編

 『勇者』と『チート能力』、これは人間側が編み出したと言われる召喚魔法によって定着した言葉である。人間たちは魔族に対抗するために異世界から人間を召喚する。その時に転生した人間は特殊な能力を持って転生するのだ。中には常人ではありえないほどの力を得たり、膨大な魔力を持っていたりと様々。それから召喚された人間は『勇者』と、その人間が持つ特殊能力を『チート能力』と呼ぶようになった。

 そして、目の前にいる『勇者』と名乗る男、ゼノチート=カリヴァの持つ『チート能力』は、


「俺様は、最強のチート能力、『金剛石ダイヤモンドの肉体』を手に入れた!負けることなんてありえねえんだよ!」


 ゲームならばステータスのカンストという、まさしくチートと呼ぶに相応しい能力を持っていた。


「なんだァ?来ねえのか?それともビビって手も足も出ないってか?」


 大手を振るかのように挑発するゼノチート。それに触発したのか、魔族が瞬時にダガーを手に収め、腕を振る。同時に投げ出されたダガーがゼノチートの額に正確無比に吸い込まれていく。

 が、ゼノチートは動かない。なぜならば、


「効かねえよっ!」


 額に突き刺さるはずのダガーが、金属にでも当たったかのような、カァンと乾いた音を立てて弾かれる。この男のチート能力で防御力が一切の物理攻撃を遮断するのだった。


「驚いてる暇なんかねえぞォ!」


 ゼノチートは叫ぶとともに魔族との距離を一気に無くす。魔族も応戦するように魔力の剣を創造して迎え撃つ。魔族はゼノチートの剣を躱しながら縦横無尽な斬撃だけでなく、刺突も混ぜる高度な技術を見せる。対してゼノチートは無闇に剣を振り回すばかり。技術は圧倒的に魔族に軍配が上がり、剣先がゼノチートの鎧を破壊していく。


「オラオラァ!痛くも痒くもねぇぞ!」


 しかしゼノチートの体に一つの傷もつかない。斬撃が効かないことを悟った魔族は刺突に切り替え、頭・喉・手首などの急所を貫かんと穿った。それでも一切剣先は勇者の肉体を通らない。


「テメェばかり攻撃が当たってズリいなぁ!」


 そう言った瞬間に魔族の視界からゼノチートが消える。魔族が驚いた瞬間に背後から現れるゼノチート。機敏性もチート能力で突出した彼は、瞬間移動でもしたかのように魔族の背後に回り込んだ。


「オオラァッ!!」

「くぅっ!」


 技術が全くない剣の大振りのおかげで、魔族もギリギリ反応できた。魔力で構成した剣を展開し、ゼノチートの剣を受け止めにかかる。ギリギリと鍔迫り合いになるが、ゼノチートは高らかに叫んだ。


「お前ナメてんねえ!俺様のチート能力に勝てるとでも!?」


 ガードの上から押し込みにかかるゼノチート。そこまで太くもない腕から想像を絶する怪力に魔族は再度驚愕の色に染まる。そして、


「死ねやぁぁあ!」

「ぐううぅぅっ!」


 振り抜かれた一刀。それは魔力の剣を破壊し、胴体に一閃の一撃を与えた。吹き飛ばされた先で苦悶の表情を浮かべて膝をつく魔族に、ゼノチートはまるでいじめを行う首謀者のような極悪人の表情になる。


「ケケケ!もっと来いよ!その程度じゃ俺は止まらねえよォ!!」


 せせら笑うゼノチート。側から見たらどちらが悪か分からないような状況になっており、魔族がブツブツと言いながらなんとか立ち上がる。


「小さくて聞こえねえなァ!命乞いでもしてんのかァ?」


 ヒャヒャヒャと醜悪に笑うゼノチート。だが、まだ魔族の目は死んでいない。その眼光を向けた刹那、詠唱していた魔法を放つために右手を出した。


「《ラプレイドロール》!」


 魔族が右手をグッと閉じた瞬間、ゼノチートの近くが青白く光ると同時に大爆発が起こる。この世界の上位爆発呪文ラプレイドロールがゼノチートに直撃したのだ。


「ハァ……ハァ……」


 肩で息をする魔族。上位魔法による魔力消費とこれまでのダメージにより、息が絶え絶えとなる。

 これで仕留めたとは思えないが、流石のチート能力を持つ勇者でも超至近距離の爆発はひとたまりもないはず。それに物理攻撃が効かないなら魔法で対処するしかない。魔族はそう思っていた。


 傷一つないゼノチートが現れるまでは。


「耳付いてるのか?俺はチート能力、『金剛石ダイヤモンドの肉体』を手に入れてんだよ!どんな攻撃も傷一つつかねえんだよ!ボケが!」

「……初めて聞いたんだけど」


 つらつらと説明になってない説明を初めて聞き、愚痴をこぼす魔族。状況は完全に勇者に傾いている。魔族の魔力は残り少なく、腹部に裂傷を抱えている。対して勇者は全くの無傷だ。

 優勢に傾いているのをいいことに、ゼノチートは特攻を仕掛ける。


「さっさとくたばれやァ!」


 ただの直線的な特攻。何度目かも分からない既視感を覚えるが、チートにより俊敏性が異常なゼノチートの特攻は目視で追えないほどに脅威となる。

 対して魔族は冷静になって、


「そこっ!」


 直感的に避けながらカウンターを放つ。またしても魔力の刃は弾かれ、互いに新たな傷は生まれない。


「ちょこまかと!さっさと死ねっつてんだよ!」


 またしても同じ特攻をかける。先ほどよりさらに速く直線的な特攻に、魔族は完璧なカウンターをゼノチートの顔面に叩き込む、はずだった。


「なっ!?」


 カウンターが虚しく空を切る。ゼノチートの俊敏なチート能力で一瞬にして背後に回ったのだった。振り終わりの体勢で反応ができない魔族に、ゼノチートは醜い嘲笑を向けながら剣を振り下ろした。


「俺様の!伝説の始まりだぜぇ〜!」

「ぐああぁぁっっ!!」


 完膚なきまでに魔族の背中を叩き切った。

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2026年1月2日 13:00
2026年1月3日 18:00
2026年1月6日 21:00

転生勇者は私が確殺! ユキ @raintime

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