『子供部屋おじさんは、静かに人生を積み上げている』
@mai5000jp
『子供部屋おじさんは、静かに人生を積み上げている』
『子供部屋おじさんは、静かに人生を積み上げている』
六畳の畳は
少しだけ軋む
それは
この部屋が
何度も人生の重さを
受け止めてきた証拠だ
朝は
母の足音が階段を上がり
夜は
洗濯機の低い唸りが
一日の終わりを告げる
誰にも見せない
通帳の数字
派手な桁じゃない
でも
逃げない桁だ
同窓会では
笑われた
「まだ実家?」
「子供部屋おじさんじゃん」
その言葉は
一瞬
胸に刺さる
けれど
抜けない棘にはならない
なぜなら
彼は知っている
借りていないこと
返すものがないこと
壊れない暮らしの
手触りを
役所のカウンター越しに
人の人生を
何百と見てきた
崩れる瞬間
戻れない地点
もう一度
立ち直るための
わずかな余白
彼は
その余白を
自分の人生に
残してきた
六畳は
狭いかもしれない
だが
逃げ場ではない
基礎だ
誰かに見せるための
人生じゃない
誰かに勝つための
暮らしでもない
それでも
今日も
家に五万円を入れ
静かに
明日を迎える
拍手はない
賞状もない
ただ
確かに
積み上がっている
この人生は
まだ
倒れていない
そして
それだけで
もう
十分に
強い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます