死する星に咲きほこる花

龍神雲

死する星に咲きほこる花

 感情も生命体も枯渇する地で生命の息吹が唐突に始まった。

 飛行機の形をした黄土色の大木からするりと細い枝が四方八方に伸びた先に蕾が一つできた。その蕾は紅梅色で松の実に似ており冬の訪れを感じさせる色合いだが、全て滅びる地で凄まじい生を放つのは異常だ。周囲は大木の肥料や栄養になる物はなく、干からびた砂漠のような砂、空には惑星の残骸が散り、目の前には時空の歪みで発生したブラックホールが飲み込もうとしているのだ。だが芽吹く大木からなる蕾は更に膨らみ、肥大し、鼓動を脈打ちだした。

 もしかしたらこれは、死ぬ直前に見る走馬灯なのかもしれない。やがて蕾はふわりとした薄紅色の花を咲かせたが、その花は大木や俺よりも巨大化し、ずしんと食い込むように地に落ちると花弁二枚を器用に動かして移動し、目前に迫るブラックホールを残る花弁でそっと包み、惑星おれをも包んだ。花弁の温もりに海が溢れ、地は潤い、愛しい太陽を思い出した。

〈了〉

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