ほしわた氏の作品群の中で、これだけが正真正銘のホラーだ。
業務記録という形式が恐怖の器として完璧に機能している。感情を排した事務的な文体で記録が積み重なるたびに、何かが少しずつ欠落していく——生徒が名簿から消え、記録が初日に巻き戻り、昭和初期の新聞記事がデータベースごと消滅する。
怖いのは球そのものではなく、周囲の人間が「最初からそうだった」と自然に受け入れていく構造だ。丸森教諭の「最初からなかったと思うけど」という返答に感情の揺れがまったくない——その無反応こそが最も不気味だ。
そして最後の業務連絡——「整理が完了しました」。何が整理されたのか、誰が何をしたのか、一切説明されない。夏季休暇は通常どおり取得して差し支えない、という一文の事務的な明るさが、すべてを闇に飲み込んでいく。
「蜂つきわたあめ」の余白への愛と、この作品の余白への恐怖は、同じ手つきから生まれている。完結済み1話・2700字。読後、自分のノートを開いて最初のページを確認したくなる。