第19話
新しいアジトでの生活が始まって、三日が経った。
全員が、それぞれの役割をこなしていた。
山本は、戦略を練っている。
ヒューゴは、新しい魔法の研究をしている。
結衣、紫苑、明日香は、訓練に明け暮れていた。
「もう一回!」
訓練場で、紫苑が叫んだ。
結衣と明日香が、紫苑に向かって攻撃を仕掛ける。
結衣は魔法。
明日香は拳。
だが――
紫苑は全てを避けた。
そして、カウンター。
剣が、二人の首筋に当てられた。
「そこまで」
「くそっ、また負けた……」
明日香が悔しそうに言った。
「紫苑、強すぎない?」
「まだまだ」
紫苑は首を振った。
「政府の兵士たちは、もっと強い」
「あれより強いの!?」
「ああ。特に、特殊部隊は」
紫苑は真剣な顔で言った。
「だから、もっと強くならないと」
「わかった……」
結衣も頷いた。
「もっと、頑張る」
三人は、午後いっぱい訓練を続けた。
夕方。
結衣は一人、川辺に座っていた。
新しいアジトの近くには、綺麗な川が流れている。
水の音が、心地よかった。
「ここにいたんだ」
背後から、紫苑が来た。
「うん……ちょっと、一人になりたくて」
「何か、悩んでる?」
「うーん……」
結衣は考えた。
「私、本当に強くなれるのかなって」
「どうして、そんなこと思うの?」
「だって、紫苑はどんどん強くなってるのに……私は……」
結衣は俯いた。
「まだ、足引っ張ってる気がして」
「そんなことない」
紫苑は結衣の隣に座った。
「結衣は、十分強い」
「でも……」
「結衣の魔法がなかったら、あの時逃げられなかった」
紫苑は結衣を見た。
「結衣がいたから、生き延びられた」
「紫苑……」
「だから、自信持って」
紫苑は結衣の手を握った。
「結衣は、私のパートナーなんだから」
結衣の目から、涙が溢れた。
「ありがとう……紫苑……」
「どういたしまして」
二人は抱き合った。
川のせせらぎを聞きながら。
「ねえ、結衣」
「ん?」
「もし、冴子さんを救出できたら……」
紫苑は空を見上げた。
「その後、どうする?」
「その後……?」
「また、政府と戦い続けるの? それとも……」
紫苑は言葉を選んだ。
「逃げる?」
結衣は考えた。
正直、逃げたかった。
こんな戦いばかりの日々から。
でも――
「逃げられないよ」
結衣は首を振った。
「私たちが逃げたら、他の覚醒者たちはどうなる?」
「……そうだね」
「だから、戦う」
結衣は拳を握りしめた。
「政府を変えるまで」
「結衣……」
紫苑は微笑んだ。
「強くなったね」
「紫苑のおかげだよ」
二人は笑い合った。
そして――
唇を重ねた。
川辺で。
夕日を背景に。
美しい一瞬。
「愛してる、結衣」
「私も、愛してる、紫苑」
二人は、しばらくそこにいた。
平和な時間を噛み締めながら。
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