もうすぐ雨が降る

縞間かおる

<これで全部>

 朝のうちはまだ日が差していたのに、空はすっかり灰色だ。

 変わってしまった風向きが運ぶものは……伸び盛りの草木の吐息を孕んだ湿った空気。

 きっと“彼ら”にとっては好都合の……雨がもうすぐやって来る。


 その昔……「傘が無い」なんて歌があったけど、私はお勤めしているから……晴雨兼用の日傘やオフィスへ置く為の折り畳み傘の1本くらいは買える。


 けれどそれが何になるのか……

 小雨ならむしろ濡れて……

 不毛な恋に泣き濡れても消えない己が心の熱さを冷ましたい。


 その結果、土砂降りにでもぶち当たったのなら……それこそ貞子みたいな風貌で雨の中を徘徊するのも悪くない。

 そう! 私が……

「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」ならぬ「そりゃアホや! 山ほど過ぎるバカ活動」って指差されて嗤われたら……アイツの“伝説”に箔を付ける事になるだろうし……私を見て「人の振り見て我が振り直せ」とバカを見る女も少しは減るだろう……


 なんて言ってみても


 本当は、アイツが他の女とくっ付くのが嫌なだけなんだ。


 自分はとっくに捨てられていると言うのに。


 バカだな!


 ホント!!


 バカ活動!!


 わざと用事を作り、他のコとお昼をずらして会社を出ると

 はランチタイムが終わっていて


 またまたバカを見た私は空を仰いだ。


 霧雨が涙の代わりに頬を伝った。



                       おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もうすぐ雨が降る 縞間かおる @kurosirokaede

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画