壊れた世界で、もう一度、君と出会う
@hamanasu361
第1話 夢の中の人
あぁ、夢だ。
目の前に、小柄な少年が立っていた。
灰色の髪が、さらりと風に揺れる。こちらを見ようと顔をあげると、空色の瞳から、涙がこぼれた。
君と、ずっといたい。
でも、ぼくは世界を捨てられない。
ポロポロと涙がこぼれる。
だから、君を引き留められない。
そんなことで、泣かないでほしい。
笑っていて欲しい。
俺の大切な人。俺だけの神様。俺の愛してる人。
君がいなくなっても、この気持ちは、変わらない、愛してる。
ずっと、君だけだ。
目が覚めた。
起きて、まわりを見て、ちゃんと自分がどこにいるのか確認する。
ちゃんと日本の家だ。
涙を拭いて、着替えるとまだ薄いヒゲを剃って、顔を洗い、適当にパンを食べて仕事をする。
今は、外に行かなくても、仕事が出来る時代だから、家で仕事をしている。
外を見ると、天気がいい。
こんな日は、よく外で食べていたな……。
夢に出てくる人は、楽しいことが好きで、春になれば、森に苺を摘みにいき、秋はりんご狩りをしていた。
よく笑っていたと思う。
昔は、大人になれば、こんな夢など見なくなると思っていた。
だけど、会いたい気持ちは、薄れることなく、心にあり続けている。
もし、会えたら、どんなみっともないことをしても、離れないし、離さない。
夢の中の自分は、あまり気持ちを伝えなかったけど、もし、会えたなら、もう気持ちをおさえたりしない。
それに、誰かと付き合っても、こいつじゃない感がハンパない。
それに気づいてから、もう誰かと付き合うのはやめた。
相手に失礼だし、自分も疲れてしまう。
家から、歩いて十分くらいのコンビニに入ろうとしたら、ガラスが割れるような音がした。
驚いて外を見ると、空に、亀裂が入りそこから、腕が生えて来た。
長い指に鋭い爪。
ガシャンと音を立てて、何か落ちた。その下にいた車が潰れて炎上した瞬間、悲鳴を上げてまわりの人が逃げ出した。
その中に、見つけた。
髪の色が淡い金色になっているけど、見間違えるわけがない。
少年は、逃げないで、空を見つめている。
走って少年の元へいき、叫んだ。
「何で、逃げない!危ないだろう」
少年は、きょとんとしてこちらを見た。
「君…ぼくを助けようとしたの?」
「そうだよ」
困ったように笑う。
「ぼくは、ある女の子と約束をした。どれだけ人間が汚くてどうしようもなくなっても、一人でいいから、優しい人がいたなら、人のために戦うと」
少年は、白銀の弓を構えて矢を放つ。
矢は、亀裂から伸びた手に当たると、吸いこまれ、そこから、化物の腕がボロボロと崩れた。
「ケガはないか?」
確認すると、少年は頷いた。
「…良かった」
「何で、ぼくを助けようとしたの?」
「お前が、ケガするかもしれないだろう?神族だって、ケガしたら、痛い」
少年は、空色の瞳を見開いた。
「それに、クロスディに傷がつくのは、いやだ」
手で頬に触れると、ちゃんと温かい。
「ライトニングなの?」
「そうだよ」
言葉を続けようとした瞬間、強い光が降りて来た。
黒い美しい髪、意志の強そうな黒い瞳、金色の冠を頭に乗せた美しい女性。
まるで巫女のような姿の女性を見て、クロスディは、言った。
「アマテラス殿、あなたが言っていた、いい事ってライトニングのこと?」
「はい。会いたいかと、思いまして」
その笑顔は、ゾワッとするほど、美しい。
「…それについては、お礼を言うけれど、何かお願いがあるんじゃない?」
「…その通りでございます。この世界について」
「終わるのでしょう?この世界は」
「いいえ。終わらせません。そのために、貴方のお力をお借りしたいのです」
「…世界の改変をしたいの?」
クロスディは、簡単に言うけれど、そんな簡単なことなのだろうか?
「私も、力を使いますが、私達だけでは、足りない」
恥ずかしいことですが、と彼女はうつむいた。
「この世界の神は、まだ若いもんね」
クロスディは、言った。
「…どのように、変えるの?」
「クロスディ様の世界は、世界のあらゆる黒い気を、魔物に変えることで、世界の浄化をしていましたよね?」
「うん。あれがたまると、世界が壊れちゃうから、魔物にアイテムやお金をもたせて、ある程度黒い気がたまると実体化するように、したけど…。
でも、それをやると、人間が育たない可能性があるけど、大丈夫?」
魔物と戦えば、死者が増える。
「大丈夫です。悲しいですが、それしか、他の神が納得しないでしょう」
どうやら、神族の間で、人間不要派と守りたい派がいて、意見が割れているようだ。
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