夢日記

れでぃば

およなぎにいこうかな

さっき仮眠してる時に見た夢が怖かったので記録として残しておきます。

夢の話なので、本当にあったことではあるんですがフィクションです。


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「およなぎにいこうかな」というタイトルの同人誌を買った。

気になった理由はごく単純で、コミケの会場をフラフラと歩いていたらたまたまその表紙が目に止まった……というだけなのだが、今振り返るとその気持ちは持たない方が良かったのだと思う。


見た目は黄緑の地に黒の明朝体で、


およなぎに

いこうかな


と書かれただけの簡素なものだった。


家に帰りそそくさとページをめくる。

内容としてはレポート記事、実験報告書のようなものが淡々と続いていくばかりで、漫画などの面白い要素は特に無い。


《本冊子は、言語が聴者(→言語を受け取った対象のこと。)に与える印象の差と副次的効果について、脳波測定、録画、録音、実施後のアンケート、ヒアリング等を用いてまとめたものである》

《実験には、事前に収録された「およなぎにいこうかな」という音声を聴者に聴かせ、そこから経過観察・事後調査に移る。

この音声は当ページのQRコードから確認出来るため、読者の皆さんも一度ご視聴頂いた上で読み進めてみると新たな気づきがあるかもしれない。》


前書きを読んだ俺は、カメラでQRを読み込み、Googleドライブの「実験用音声.mp3」を開いた。


*およなぎに いこうかな


女性のか細い声で、ゆっくりと、淡々と、冷たく語るような音声が流れた。

声質は決してプロのそれとは言えず、おそらく実験チームの一人にでも言わせたのだろう。


次のページに進むと、そこからは被験者(=聴者)のケースが列挙されていた。


ケース①: 「泳に行こうかな」

泳(およなぎ)、という行為だと認識した場合。

聴者は青い水、海洋、プール、水着などを想起。

「泳ぎに行きたくなった」「夏をイメージした」等の回答が多数。


ケース②: 「オヨナギ」(魚類)

「オヨナギ」という架空の生物を頭に浮かべた、という回答が多数。

中でも海洋生物をイメージした、という聴者が多く、ケース①との関連性も推察することができた。

ハギ、オコゼ等の魚類を連想・想起したのではないかと思われる。

この際、「〜にいこうかな」は概ね無視されており、文脈と連想には関係性が薄いことが読み取れた。


ケース③: 「泳」(地名)

「泳」(およなぎ)、という地名を想像した、という回答。

ヒアリングにて具体的な場所のイメージを伺ってみたが、決して彼らは語ろうとしなかった。


ケース④: およなぎ

ケース①〜③のいずれにも当てはまらない回答。

実験実施後、聴者の数名は放心状態となり、「およなぎにいこうかな」と呟くばかりで、意思疎通を図ることが困難だった。

アンケート用紙を確認した所、「言葉の意味を理解してはいけない」「およなぎを知ってはいけない」と乱雑に書かれたものが一枚あった。

実験チームの中で「およなぎ」の意味を理解した者は居なかったため、我々の中に被害者は生まれなかった。


《本冊子をお読み頂き、音声データを視聴した読者の方の中で、「およなぎ」を理解した方がもしいらっしゃいましたら、一刻も早く忘れてください。どうか一刻も早く──》


俺はその意味を理解できるような気がして、その瞬間、あの女性の声が脳内を何度もこだました。


およなぎに いこうかな

およなぎに いこうかな

およなぎに いこうかな……


「これは理解してはいけない」と思い始めてからは突如として大きな不安、動悸に襲われ、どうしようもない冷や汗が吹き出してきた。


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↑ここで目が覚めました。

聴いてはいけないものを聴いた気がして、とても怖かったです。

外は暗くなっていました。

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