ウチナー・オブ・ザ・デッド弍

小柳こてつ

序章

琉球は、一度、死にかけた。


海を越えて災いが入り込み、

島々では、生と死の境が崩れた。

噛まれ、倒れ、変わっていく者たちから逃れるため、

人々は身を寄せ合い、ただ生き延びることを選んだ。


やがて混乱は静まった。

だが、平穏は戻らなかった。


島に広がったのは、「隔離」という言葉だった。

屍者から民を守るため。

感染を防ぐため。

秩序を保つため。


そう語られ、柵が築かれ、人は分けられた。


これは、ただの戦の物語ではない。

刃が乱れるだけの話でもない。


確かに、人は戦い、

刃は幾度も振るわれる。


だが、そのたびに問われるのは、

どう斬るかではなく、

なぜ、手を使うのかだった。


守るために。

生き残るために。

受け継ぐために。


これは後に語り継がれる、琉球武道の物語である

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