いちに、さん。

冷たい足音が暗闇に歩を進める。

自らが発した足音なのに、自分とはなんだか分離しているようで。


進んでいるようで、実は戻っていて

でもやっぱり進んでいる。

なにも起こっていないのに、ずっと休みなく何かが起こっているようで。けどやっぱり何もない。そんな日々。


まっくらが、くろいクチをひらく。

あそぼうよ、なにしてあそぶ?

そっかあ、またこんどね。

こんどはなにしてあそぶの?

うーんそっかあ、まっくらはきみをきにいったみたいなんだ。またあそんでね。



なにか聞こえたようで、なにも聞こえなくて。

誰かの声がして、でも何も聞こえなくて。

あなたのせいなのに。きみのせいにして。


まっくらが、黒いクチを開く。

おはよう。いい夜だね、星が綺麗

見えない?そうか、ふふふ

でも忘れないで、まっくらは君を気に入ったみたいなんだ。ふふふふふ



寂しいようで、鬱陶しくて。

水を飲んだら、喉が渇いて。

鳥と一緒に、もぐらになって。


まっくらは、黒いクチを開いて。

大きく、大きく、飲み込んだ。



完。

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路 -みち- 風見野 @kazamino

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