通りすがりの変態に異能力貰った件について

ドラゴン竜

おっぱい

あー、おっぱい揉みてぇなぁ。学校帰り、夕暮れに染まった道を歩きながら俺の頭を支配するのはそんな事だった。


俺は芥丸 玲一(あくたまる れいいち)、どこにでもいるおっぱいが好きな高校生だ。さて、自己紹介もした所で問おう、君は、おっぱいが好きかね?ふむ、どうやら相当好きな様子だ。どうやら俺たちは同士ベストフレンドのようだ。


まずは、おっぱいという言葉をかみ砕いていくとしよう。いや、この表現は正しくないな、揉みしだいていくとしよう、だ。


初めにおっぱいを表す言葉はそれなりに世に存在するが、俺はその中でもおっぱい、という表現が最も好きだ。なぜならおっ、で驚きを表し、ぱい、でその形を明確にする。これもうおっぱい以上におっぱいを表せる言葉なんて無いんじゃないか。


もちろん、君には君の持論があるだろう、俺はそれを否定しない。むしろ聞かせて欲しい。他人の意見がときたま類まれなるビッグバンを生むこともあるからな。


おや、見て欲しい。ビルに備え付けられたデカテレビに最近人気の女優、確か倉本 そよぎという名前──いや芸名か、その彼女が映っている。え、彼女のおっぱいはちいさいから好みじゃない…だと?俺は君を殴りつけた。


大きいおっぱいも小さいおっぱいもどっちだって大切なおっぱいなんだ!おっぱいに貴賎なし、これは覚えておいて欲しい。それはそれとして俺は大きい方が好きだ。包容力を感じるからな。


「うんうん、ひじょ~に共感してしまうねぇその考え」


うん?何だこいつ。画面の向こう側のお友達イマジナリーフレンドといつも通り楽しく談義していたところに水を差してきやがって。いや、しかし待てよ。もしかしてこいつ、俺のあまりにも膨大過ぎる妄想力を前に実体を持って顕現したフレンズである可能性が微レ存?


「イマジナリーフレンド(実体あり)ですか?」


「いいえ、違います」


そつなく否定される。ならば得られる情報からその正体を探るだけだ。無精ひげにぼさぼさの髪。視界ゼロ間違いなしのぐるぐる丸眼鏡。よれよれの白衣に純白のブリーフ。


俺は多様性を良しとするがこの体毛はあまりに不快だ。これを法で裁けないなら先人たちが築き上げたルールのなんて穴の多い事か。警察にお縄になる前に教えてあげよう。


「あの、服が変態です。じゃない大変です」


「んん、おっとズボンをはき忘れていたよ。いやいや、これは親切にありがとう」


そういうとブリーフ怪人は指をパチンと鳴らす。すると驚く事にブリーフと不快なすね毛がズボンによって隠された。おお、これはもしや。


「異能、ですか?」


「いぐざくとりー」


ブリーフ男、じゃなくなったので見てくれ的にドクターY(やぶ)とでも呼称しようか。ドクターYはご機嫌な様子で、背負ったバックを地面に下ろして中にあるモノをガチャガチャ音を立てながらあーでもないこーでもないと次々に投げていく。なんかあれだな、ドラ〇もんがろくでもない道具引っ張り出す時こんな感じだよな。


「よっし、見っけた!」


しばらくしてそんな声をあげたかと思うと、その手には注射器の様な物が握られていた。容器は透明で中には紫色のかすかに光を放つ謎の液体がちゃぷちゃぷと浮かんでいる。


「ドクターY、それは?」


「うむ、これは人に異能の覚醒を促す薬。その名もメザメル君マークワン試作型乙式じゃ」


「なんと……」


言うべき言葉が見つからずに、俺は世紀の発見をした博士の助手の心持でそのメザメル君とやらに目を向ける。


異能、それは超常の力。なんかこう、ぐわーってしてて、ぶわーなって、俺もう愕然としてぇ!みたいな。そんなすんごい力、らしい。授業で聞いたがその時間は瞑想(睡眠)していた為詳しい情報はロストしている。


「関心せんな、玲一君。授業を聞いていい大学に入る、勝負はもう始まっておるんじゃぞ?」


「申し訳ありませんドクター。ところで心の中読むのやめてもらっていいですか、なんかモヤっとするので」


そう、このドクター出会い頭からずっっと心の声に反応してくる。さっきズボンを出した時に異能者だって気付いたけど、うっすら思った事全部口から出てたのかな…なんて少し不安になったものだ。


『いや、すまんね。なんか別に気にしてなさそうだったからいいかなぁって』


こいつ、脳内に直接!?


「頭に響くのキショいんで普通に喋ってください」


「あ、はい」


「で、俺に何か御用でしょうか」


今更だが聞いておく……いやほんとに今更だな。これ開口一番に聞くべきだったよな。


「ワシの目的は一つじゃよ、しんい、あ間違えた。玲一君。君に異能をぷれぜんとふぉーゆー」


ドクターは言葉を言い切る前に達人業前な動きで俺の眼前から消え去り、次の瞬間に首に鋭い痛みが走る。慌てて首を押さえて視線を横に向けると、シリアスな表情のドクターが中身がない注射器を手に立っていた。


「玲一君、君はこれから様々な事件に巻き込まれるだろう。見事それらを乗り越え、もう一度会おう。その時に全ての真実を語ろう」


「ドクター意味深な事言ってるところすいません。血が止まらないので助けてください」


「あれ!?完璧に処置したのに!えっと、ごめん。ちょっと待ってね」


ドクターは手際よく止血、消毒、ガーゼをしてくれた。


「うおっほん。……玲一君、君n」


「いや、もう無理ですって。シリアスな感じにすんのムズイですって」


「いやー無理かぁ。ま、仕方ない次いこ次」


「切り替え方体育系だなぁ」


ちょっとやだな、体育会系のドクター。


「っ?あ、れ…」


とてつもない眠気に襲われる。瞼が落ちてきて必死に上げようとするけど、まるで錘が付いたみたいに上がる気がしない。ドクター、謀ったな!?


「お休み、芥丸 玲一。千年後の世界でまた会おう」


おま、え、けん、……か、よ───


──────────────────────────────────────


う、うーん。頭が痛い。どうやら気を失っていたみたいだな。マッドなサイエンティストの実験台にされてしまった。俺はどうなってしまったんだ。まさかとは思うが千年ほんとに経ってたら流石に笑えんぞ。


「あ、起きた」


声の方へと目を向けると金髪碧眼の美少女、そして何より───


「巨乳、だと!?」


「はぁ、な、何言ってんのよ!」


いかん、生でこんなおっぱいを拝んだことが無かった為、心にとどめておくことが出来なかった。にしてのなんて美しい形なんだ。デカさもさることながら、形がいいね。張りのある若さを感じる良いおっぱいだ。


「あんた、人の胸見ながら何満足げに頷いてんのよ。キモいわよ」


「かまわない、俺は俺を偽る気はない」


「そ、そう。ならいいわ。とっとと始めましょう」


そういった美少女は軽く伸びをすると、足元に置いてあった槍を蹴り上げて流麗な動きでそれを掴み構える。おー、お見事。拍手しておく。


「あんた、なんか調子狂うというか変なやつね。構えなくていいの?」


「いや、待ってください。構えるとか始めるとかなんの話なんでしょうか巨乳のお嬢さん」


「きょ…ま、まあそこは置いといてやるわ。あんたまさか何も知らないなんて言わないわよね?」


「そうですね、ここは誰で私はどこ状態だとは言っておきましょう」


「ええ……」


美少女が顔をしかめて困ったと言わんばかりに唸っている。いやー面が良いと何しても様になりますな。


「まずここは今回の夢比べの会場よ。そこはいい?」


「夢比べとは」


「あーもう、何も知らないの確定じゃん!」


わお、地団駄踏んだとこに亀裂走ってる。あれの矛先が俺に変わったら死ぬな、いや死ぬね。つーか、なんだよ夢比べって。漢比べ的な?


「はあ、あんたまず異能は使えるわけ?まさか関係ない一般人なの?」


ん、どうやら異能が絡む事態のようだ。俺はドクターに改造されてるからあの人がガチでやぶじゃなけりゃ俺はきっと異能が使えると思うんだが。どれ、試してみるか。


「はああああ!いでよ我が異能、その力をここに示せッ!」


それっぽい動きとそれっぽい掛け声を叫ぶ。すると俺の手のひらから光があふれ出す。


「「おおっ」」


思わずリアクションが被った。


「なんであんたが驚くのよ」


「いや、ほんとに出来るとは思ってなかったので」


「そう、でそれ。いつまで光ってんの?」


俺は無駄に神々しい光を放つ手のひらに目を落とす。何なんだろこれ。シャイニン〇フィ〇ガー的な感じで掴んだやつをヒートエンド出来んのか?そんな考えが朧げに浮かんだ時、光が更に強まり俺の視界を完全に奪った。


視界が戻った時、俺の目に飛び込んだ光景は顔を真っ赤にして槍を振り上げている美少女とそのたわわを揉みしだいている俺の手だった。


うーん、これはギルティw

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