第2話:状況把握
ドアを開いた先は森の中だった。
家の近くにこんな森は無かったはず。遠くまで運ばれたのか?
新しい情報にちょっとパニックになったが、少しして落ち着いて辺りを見回す。
部屋と思っていたものは小屋であり、小屋以外には周りに何もない。
森の先は見えない。小屋の周り5mくらいは木が生えていないが、そこから先はずっと木である。
こんなピンポイントに小屋の周りだけ木が生えていないとかあるのか?分からない。
分かった事は1つ。小屋には水道もトイレも電気も無いという事。
このままここにいても何も分からない。とりあえず森に入って、街に戻って家に戻るか。
ここまで運んでこれたんだ、そんなに遠くないはずだし、少なくとも道路が近くにあるはず。
それにしても、誘拐されたのか?何故?多少のお金はあるけど、富裕層じゃないし、人違い?いや、子供ならともかく、スーツ着た40歳超えのおじさんだぞ。
再び情報を頭で処理するが、分からない事が増えた気がする。
気を取り直して、小屋に戻り荷物を手に取る。
カバンの中身を確認してみるが、特に変わった事も無い。スマホも入ったままだ。
…スマホで現在地確認すればいいのでは?なんで気づかなかった?
急いで地図アプリを起動。しようとしたが、圏外のようだ。
今の日本で圏外って、どれだけ田舎に来たんだろうか。富士山やある程度有名な登山スポットであれば、電波が届いているはずだし。
帰るのは結構大変そうだ。スマホを見る前より憂鬱な気分になりつつ、荷物を持ち小屋を後にする。
◇◇◇
森に入ってどの方向へ進めばいいか。目印になるようなものは無い。目に映るのは木だけなのだ。
そこで、ひたすらに太陽の方向へ進む事にした。これなら実は同じ所をグルグルしていて全然進んでなかった、という事態は避けられるはず。
どの方向に道があるかも分からない状況である。とにかく一方向に進めば何かあるはずだ。
そこから何分、何時間歩いただろうか。
何も無い。いや、木はあるよ。木しかないよ。進んでいるはずだが、景色が変わらないから進んでいないように感じてしまう。時間も経ったはずなのに経った感じがしない。疲れと太陽の高さから時間が経っている事は分かるけど。日も徐々に落ちてきたし。
歩き続けているのもあり、お腹が空いてきた。喉も乾いてきた。
小屋から出て森を進んでいるが、小屋で待っていれば誰か来てくれたんじゃないか。
なんで俺がこんな目に遭っているんだろうか、アーリーリタイアしてのんびり生活が待っていたはずなのに。
空腹と疲れはマイナス思考を加速させてしまうようだ。ダメだダメだ。
小屋に戻って休んでから再度日を改めて森を突破しようか、いや小屋まで戻るのにもまた数時間かかるんだぞ。それならこのまま進んだ方がいいじゃないか。
そんな逡巡をしていると、どこからか声が聞こえてきた。
『ホームに戻りますか?』
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