最弱スキル〈共鳴〉しか持たない俺、可愛い女の子の能力だけ無限に強化できるせいで異世界最強パーティの中心になる

finalphase

第1章 最弱スキルと追放

第1話 最弱スキル〈共鳴〉を引いた日

 俺の名はアルト。十八歳の青年だ。

だが、俺には前世の記憶がある。


前の人生での名前は、佐藤晴斗。

どこにでもいる、ありふれた日本人だった。


前世は――正直、つまらなかった。


特別に不幸だったわけじゃない。

平凡な家庭、平凡な暮らし、平凡な日常。

ただそれが、延々と続いていただけだ。


勉強も、運動も、音楽も、すべてが平均点。

得意なこともなければ、致命的に苦手なこともない。

人に誇れるものは何もなく、かといって哀れまれるほどでもない。


その「何者にもなれなさ」が、どうしようもなく嫌だった。


――そして、死んだ。


理由は覚えていない。

気づいた時には、俺は別の世界で生まれていた。


赤ん坊として、だ。


最初は夢かと思った。

だが、成長するにつれて理解した。

ここは現代日本ではない。

いわゆる、異世界転生というやつだ。


名前はアルト。

金髪でも青髪でもないが、日本人っぽさもない。

鏡を見るたびに、前世とは違う人生を生きていることを実感した。


そして、この世界には一つの重要な儀式がある。


スキル判定。


各人が生まれ持つ固有能力を明らかにする儀式で、

この世界では十八歳が成人とされている。


つまり――

十八歳の誕生日を迎えた瞬間、否応なく自分の“価値”が示される。


俺は、この日をずっと待っていた。


前世では、何一つとして特別なものを持てなかった。

だが、この世界では違う。

どんなスキルであれ、使いよう次第で未来は変わる。


そう信じていた。


そして今日。

冒険者ギルドで、俺のスキル判定が行われる。


俺の前に立つのは、

ギルド公認の〈スキル鑑定官〉と、淡く光る〈鑑定水晶〉。


静寂の中、結果が告げられた。


俺のスキル――


《共鳴》。


……は?


正直、意味が分からず焦った。


鑑定水晶に浮かび上がった説明文を読む。


「周囲の魔力の流れに、わずかに影響を与えることができる補助系スキル。」


……分かるようで、分からない。

いや、ほとんど分からない。


随分と抽象的だ。

具体性がまるでない。


周囲から、冷めた視線が向けられる。


「これは……外したか。」


思わず、そんな言葉が漏れた。


スキル判定の後には、冒険者ギルドによる正式評価が行われる。

だが、この場の空気がすべてを物語っていた。


――外れスキル。


そう判断されているのが、痛いほど分かる。


その時だった。


「ぷっ。」


誰かが、吹き出した。


視線を向けると、そこには金髪の少女が立っていた。


身なりからして、かなりの上流階級だと分かる。

立ち姿から、強い自信が滲み出ていた。


「共鳴って……。」


少女は口元を押さえ、嘲るように笑う。


「説明も曖昧だし、“わずかに影響”って何よ。

どう考えても外れスキル確定じゃない。」


そして、はっきりと言い放った。


「そんなゴミみたいなスキルを持ってる奴と、一緒にいたくもないわ。」


周囲からどっと笑いが起こる。


胸の奥が、カッと熱くなる。


「じゃあ、お前はどうなんだよ。」


俺がそう言うと、少女は得意げに胸を張った。


「あらやだ。

私のスキルは火属性魔法・Sクラスよ。」


勝ち誇ったように続ける。


「単体攻撃力なら、最強クラスって言われてるわ。

それに私は、あんたみたいな地味な虫けらと違って、輝いてるもの。」


確かに、見た目は文句のつけようがない。

高身長で、整った顔立ち。

非の打ち所のないモデル体型だ。


――だが。


性格が最悪だった。


俺は、女に見下されるためだけに異世界転生したわけじゃない。


「お前な……いい加減にしろよ。

人が黙って聞いてりゃ、つけあがりやがって……。」


そこまで言いかけて、思わず瞬きをした。


――彼女の姿が、消えていた。


一瞬で。

まるで、最初から存在しなかったかのように。


俺は、拳を強く握り締める。


「ちくしょう……。」


歯を食いしばり、吐き捨てる。


「あの女だけは……絶対に許さねぇ!!」

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