第六話
突然ですが…ここで問題である。隣に座っている女子生徒のところに、数人の男子生徒が集まって平民と罵っている。どう反応するべきだろうか。あっ、大前提として助けることは決まっている。これは助け方を聞いている問題である。
さて、そろそろ現実を見ようか。さすがに夢だと思う。いや、幻覚の可能性もあるんだけど。僕も初めて外に出て、何気に疲れているのかもしれない。
チラリと隣の席を見る。そこには綺麗な黒色の髪を肩あたりまで伸ばし、すべてを呑み込む海のような碧眼を持つ美少女がうつむいて座っていた。というか、この学校って美少女率高くない?外見もテストの科目に入ってるのかな?
まぁ、とにかくだ。その机の周りには、いかにもボンボンといった感じの少年とその取り巻きたちがたむろしていた。いや、たむろしているわけではないか。少女に対して、悪口を言っているね…それも一方的に。
「おい平民!!なんでお前みたいなヤツが、ここに入ってるんだ!?何か不正をしたんじゃないのか?」
うん、あたおかだね!!この時代に平民って…頭がおかしいとしか言葉が出てこないよ。だって貴族制はとっくの昔に廃止されてるんだよ?それとも自分が貴族だというロールプレイでもしてるのかな?それにもし言うとするなら、平民じゃなくて貧乏人のほうが正しいでしょ。
取り巻きの一人が少女の机の脚を軽く蹴る。うっわ、マジですか。この学校…というかこの時代で、こんなことをする人って存在してたんだね。なんで合格できたのか分かんないよ。
ほんとに最悪だ。入学早々にいじめが発生とか、どんな嫌がらせだろうか?ここで助けなければ、僕の悪評がなぜか広まって悪役令息まで一直線とかないよね?まぁそうじゃなくても助けるけど。
他の生徒たちはいじめっ子たちに目を合わせないよう、顔を完全にうつむかせている…あるいは目をつけられないように周囲の生徒と話している。まぁ責めるべきことじゃない。
先生がやって来るのを待つのが、この場での最適解の一つだからね。そう、だから彼らを責めるのはお門違いというやつだ。そもそもこうなった原因は、いじめっ子たちにあるのだし。
さらに言えば、彼らは子どもだ。こういうことの対処は大人に任せるべきである。そして僕は前世の記憶を含めれば、大人と呼ばれる存在なのである。あとはここで信用を稼げれば、悪役令息への道をさらに逸らせると思うからね。
「君たちさ、そんなことして恥ずかしくないの?」
やべっ。初っ端から喧嘩を売るスタイルで行ってしまった。うっかり、本音が出ちゃったよ。まぁいっか。なんとかなるだろうし。というかなんとかするしかないんだけど。
ギロリと取り巻きたちがこちらを見て、ガンを飛ばしてくる。だけど前世の記憶がある僕が、子どもの威圧だけでビビるわけがない。それにもし殴られたとしても、たぶん父様と母様が報復してくれるだろうから、わざわざビビる必要もないのである。
痛みだけが唯一の懸念点だけど、六歳児の腕力で出せる威力などたかが知れている。身体のバランスを崩して、頭を打ったりしなければ問題ないだろう。
「簡潔に言うけどさ…そういうの、やめなよ。」
わざわざ理屈をこねて説明するのはあまり得意じゃないし、好きでもない。やるならシンプルに、だ。こんな子どもに正論を言っても意味ないだろうし。
「なんのつもりだ、お前。この御方がどなたか知らないのか!?」
ボンボン少年の取り巻きの一人が怒鳴りつけてくる。うーん、困ったなぁ。僕はボンボン少年のこと、全く知らないんだよね。だって今日まで一回も外に出たことがなかったからさ。
というかボンボン少年って、ほんとに有名なの?まぁある意味有名なのかもしれないけど…。たぶん親が有名な人なんだろう。まぁどっちにしても、一度も家から出たことない僕が知れるはずないんだけど。
仕方ない。ここは正直に行こう。ここで嘘をつくのは、今後得にならないだろうからね。まぁ友好的な関係を作るのは難しくなるだろうけど、それはこれからの僕が頑張ってくれるでしょ。
「ごめんね。まったく知らないや。世間のことはあんまり詳しくないんだ。」
場に静寂が起こる。周りの生徒たちから、マジかこいつって感じの目で見られてるのは気のせいだろうか?いや、絶対そうだ。そんなに変なことだったのか。ボンボン少年を知らないのは。
「彰人さまを知らないなんて…お前っ、いったいどこの家だ!?」
んん?なんか話の流れが変わってきたぞ。これ、言っても大丈夫なやつかな?もし伝えたら、圧力を掛けられるとかないよね?いや、大丈夫か。この状況で悪いのは彼らなんだし、父様の運営する会社はこの国で一番大きな会社だ。
問題はない、ないよね?これで戦犯扱いされたらたまんないよ?まぁもう引き下がれないし、言うしかないか。
「僕は橘、橘皐月だよ。」
大事な自己紹介(とは思ってない)をこんなところで消費してしまうなんて…許さないぞ、ボンボン少年!!
次回、橘皐月…散る。
いや知らんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます