第二話
リムジンと呼ばれる車に乗って、僕は窓から見える景色を堪能していた。しかしこうして見ると、僕の暮らしている家がいかに異端がよく分かるね。
小さなショッピングモールに併設されている車庫と同じくらいの車庫があり、テニスコート5個分くらいの大きさの庭園があり、さらには釣りが楽しめる池も存在する。まぁ池に関しては、僕も伝聞なのだが。
溺れる可能性が存在する場所に、親バカの両親が僕を近づけされると思う?というか普通の親だったとしても、近づけさせないと思う。しょせんは六歳児の肉体だからね。
敷地の外にはある程度の高さの壁が存在しており、橘家邸宅の周りを一周するには2キロくらい歩かなければいけないらしい。もはや前世でいうところのベルサイユ宮殿だよね。我が家だけでテレビ番組一つ作るためのネタには十分だと思う。
そんな現代のベルサイユ宮殿な我が家だけど、そのうちの大半は使用人のためのスペースらしい。もしもの時のために建てられている、使用人たちの生活棟。他にも使用人専用の食堂などなど…。
父様いわく、最高の働きを引き起こすには才能だけでなく、最高の環境も必要らしい。これには納得の言葉しかなかった。ありったけのお金を使う道がそれしかなかったという理由もあるらしいけど。
まぁその分を抜いたとしても、普通の一軒家の何倍もあるのだけど。通り過ぎていく家々を見ながら、そんな感想を抱く。
初めての外に抱いたものはそれくらいであった。まだ自分の足で歩いたわけじゃないからね。僕は子ども用のグラスに注がれているオレンジジュースを飲み干した。
✚✚✚
私立神野寺高校付属小学校、僕が通う小学校の名前だ。その名からも分かる通り、この小学校は中学、高校にエスカレーター式で進学できる。そして高校、中学の校舎と同じ敷地内に、小学校の校舎も存在している。
つまり何が言いたいのかって?敷地がすごく大きいんだよね。それはもう、我が家と同じレベルで。名門私立学校なだけあって、いろんなスポーツの設備を整えてるし、教室とかもすごい綺麗なのだ…と、僕は母様から聞いた。
たしかにいろんな大企業の御曹司とか御令嬢が入ってくるから、寄付金とかがえげつない額なのかもしれない。他の理由も見つからないので、たぶん間違ってないと思う。
予約してあった駐車場に車を停めてもらい、僕はリムジンから降りる。ん?駐車場を予約するってどういうことか?そのままの意味だよ。敷地内にある駐車場は数が少ないから、混雑しないために予約制となっているらしい。
理解できないでしょ?大丈夫、僕も最初は何を言ってるのか分かんなかったから。学校の敷地内に駐車場ってどういうこと…って思ったから。まぁそういう理解の及ばない現象が起こることに慣れてきちゃって、とくに驚いたりすることもなかったんだけど。
周囲はほとんど車で埋まっており、この駐車場は僕たちで最後だった。別に遅刻ギリギリというわけではない。これでも集合時間には、三十分くらい猶予がある。
「他の子たちの親御さんも来ているみたいだし、私たちも早く行きましょう。」
「そうだね。それじゃあ行こうか、皐月。」
二人の言葉に僕は相づちで返す。僕は周囲の景色から、両親へと目を向けた。今日の父様と母様はいつもと違い、めちゃくちゃ着飾っている。この言い方だと、着飾らないと美しくないみたいだね。
とにかくだ。二人は僕の入学式ということで、外面をガチってきたのだ。まぁ宝石とかを、ジャラジャラとつけてきているわけではない。そんな成金みたいなことをしたら、他の親御さんになんて言われるか分からないからさ。
あくまで素の自分を引き立たせるような感じの格好だ。母様は水色をメインにしたワンピース、父様は普通にスーツである。スーツを着ただけでデキる男感が出るのは、父様のある種の才能だと思う。
入学式の行われる会場に比較的近い駐車場を選んでもらったおかげで、ほんの数分歩くだけで会場の講堂に着いた。講堂の入り口で僕は上履き、両親はスリッパに履き替える。
ドキドキと心が躍動する。この先にこれから共に過ごす仲間たちがいるからか、今まで同年代の子どもと会ったことがなかったからか。それともそのどちらもだろうか?
入り口にいた人の指示に従って、講堂内を進んでいく。やがて扉の前にたどり着き、父様がすぐ近くにいた教師であろう女性に僕の名前を伝える。女性教師は抱えていたタブレットをスクロールしていき、何かを確認する。
本人確認でもやっているのだろう。照合ができたらしく、その女性は扉の取っ手に手をかけた。そうして開かれる扉、僕はその向こう側へと足を踏み入れた。
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