第一話

はいっ、皆さんこんにちは。橘皐月、6歳です。僕がこの身体に転生?してることに気づいた日から、だいたい2年くらいの時間が経過しました。




僕はそこら辺(にいるかは不明)の転生者みたいにやらかしたりせず、ごく普通の日常を過ごしていたよ。えっ?転生した家が普通とはほど遠いだろって?それはそう!!




あの後知ったことだけど、橘家は古くから続く名家らしい。とーさまこと橘天弥は、世界的大企業のCEOも務めてるらしいよ。それなのに家族との団らんの時間はなくさないって、ほんとにすごいよね。




さて…本題に入ろうか。察しのいい人は気づいたかもしれないけど、僕は6歳になったんだよね。そして今の月は4月。何が言いたいのか分かったかな?




そう!!小学校入学だ。僕が入学する小学校はそこら辺の公立小学校ではなく、受験を必要とする私立小学校。それも上流階級の人たちが通いそうなところだ。




この二年で、僕はこの世界のことを調べた。そして理解した。この世界には異能力者とかが存在しないことに。だから悪役令息の僕がざまぁされないと世界が滅ぶとかそんな展開はなくなった。




やったね。これで安心して、悪役令息をやめられるよ(なってすらいないが)。でもまだ懸念はある。僕が悪役令息なのは確定してるけど、もしかしたらこの世界は乙女ゲームの中で、悪役令嬢までもが存在するかもしれないだろう?




杞憂かもしれないけど、心配はしておいたほうがいいと思うだよ。他人に巻き込まれてざまぁされるとか笑えないからね。




まぁ暗い話はこれくらいにしておこう。小学校に入学するということは、つまるところ外の世界を見れるということだ。小学校受験の際も自宅に試験官の人が来たし、外で遊ぶ時も下手な公園の何倍も広い庭で遊んだから、かごに囚われた小鳥みたいな状態だったんだよね。




入学式のような重大な行事の時用の制服を着て、自室に配備されている鏡に写る己を見る。そこに写るのは、相変わらず男の娘な僕。前世の記憶が蘇ってから、1週間に一回はこんなことをしているのは、僕の気のせいだろう…うん、そういうことにしておこう。




「加藤さん、父様と母様に準備ができたと伝えておいてくれる?僕は先に、玄関に向かってるから。」




扉の向こうで待っていたじいやこと執事長の加藤さんにそう伝えると、僕は今にもスキップを始めそうな軽やかな足取りで玄関へと向かう。だってしょうがないだろう?未知の世界を見にいく時は、大なり小なりワクワクするものだからね。




まぁ調べた限りだと、前世と大差ないんだけど。楽しそうな雰囲気を醸し出していた僕を見て、背後で加藤さんがニコニコとしているのには気づかなかった。




✚✚✚




僕がこれから通う私立神野寺高校付属小学校には、さまざまな企業の御曹司がいるらしい。それゆえ振る舞い方をミスると、いろんな悪評が出てしまう。両親たち親族はそのことについて触れなかったが、僕はそのことを理解している。




悪役令息みたいな振る舞いをして、二人に迷惑をかけるようなことはしないと、前世の記憶が蘇った日に誓った。そしてその誓いは今も当然続いている。




これは僕の想像だけど、僕の通う小学校は小さな国、あるいは都市みたいなものなのだろう。そして生徒はそこで生活する住民。身分は全員同じでるが、家柄やルックスなどといったスペックには差がある。




そんな小さな国家で、いかに信用という名のお金を稼げるか…それが僕の考えたこの小学校の仕組みである。まぁ、だいたいそんな感じであっているだろう。




話が逸れたね。僕がこの小さな国家でやるべきことはただ一つ、信用を稼ぐことだ。悪役令息だと言われても、それに反論して信じてもらえるほどの信用を。




そのために必要なことは……いや、今は考えなくていいか。一度考えると止まらなくなるのが、僕の悪い癖だね。今後のことを考えるよりも、今をできる限り楽しもう。初めての外出だからさ。




「すごく似合っているわよ!!皐月が一瞬、天使様に見えたくらいだもの。」




「何を言っているんだい、音羽。皐月は僕たちの天使だろう?」




二年が経過しても安定の親バカである二人。まぁ褒められて、悪い気はしないのだが。僕は二人の手を引っ張って、早く外に行きたいとアピールする。




子どもっぽい仕草をするなって?たぶんだけど、この2年間で精神年齢が幼くなったかもしれないんだ。まぁしょうがないよね。それに今の身体は子どもなんだから、別にいいでしょ。




「父様、母様、早く行きましょう。入学式に遅刻してしまっては大変です。」




好奇心を抑えきれていない僕を見て、父と母は微笑んだ。父は僕の右手を握り、母は僕の左手を握る。そういえばこうして普通の親子らしいことをするのは、何気に初めてかもしれない。




両手から感じる、両親のぬくもりに頬を緩める。こんな小さな幸せを噛み締めていられるように、僕が日常を守り通す…いや、守り通さなければならない。




それが僕に課せられし試練…あるいは運命なのだから。




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