『隣国に嫁ぐ公爵令嬢、侵略の口実を逆手に取る』
春秋花壇
『隣国に嫁ぐ公爵令嬢、侵略の口実を逆手に取る』
『隣国に嫁ぐ公爵令嬢、侵略の口実を逆手に取る』
花嫁衣装は
白ではなかった
それは
血を流させないための
沈黙の色だった
祝福の言葉は
すでに刃を含んでいた
「和平のために」
「国のために」
その言葉が
どれほど多くの戦を
正当化してきたか
私は知っていた
彼らは言う
女ひとり嫁がせれば
国は守れる、と
だが
国を売る言葉を
誰が最初に口にしたのか
誰が条約を
都合よく歪めたのか
――私は
すべて
読んでいた
馬車は進む
だが
私が運んだのは
持参金ではない
剣でもない
涙でもない
記録だ
証拠だ
理性だ
戦争は
叫ぶ者から始まる
けれど
終わらせるのは
静かに
帳簿を閉じる者だ
あなたたちは
私を
口実にした
ならば私は
その口実を
条約の頁に挟み
二度と抜けぬよう
封じただけ
花嫁は
燃え落ちるために
行ったのではない
私は
火を
消しに
行った
そして最後に
ひとつだけ
告げておく
女を
犠牲にすれば
国が救われると
思ったその瞬間
――あなたたちの国は
もう
負けていたのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます