縁側のお婆ちゃんと恋をしている小学生
まする555号
縁側のお祖母ちゃんと恋をしている小学生
もうすぐでクリスマスだけど何故か温かい日、駆け足で家に帰るとお婆ちゃんが縁側で三毛猫を膝に置いてうつらうつらと船をこいでいた。僕がそーっと近づくと、猫の耳がピクピクっと動いたあとお婆ちゃんの膝の上から逃げ出してしまった。
お婆ちゃんはそれで目が覚ましてしまい、僕を見てパチパチっと目を瞬いた。
「あぁ、ヒロト、帰って来たさね」
「お婆ちゃん僕の事を思い出せなかったの?」
「ちょっと爺さんの若い頃を思い出したんさね」
「お爺ちゃん?」
「あぁ、ヒロトは爺さんの若い頃に瓜二つさね」
お爺ちゃんというと、僕が生まれる前に死んだ人だ。顔は仏壇の上に飾られた写真でしか知らない。眼鏡をかけていて僕の顔には全然似ていない。あと、お婆ちゃんは毎月11日に「爺さんの好物だからねぇ」と言っておはぎを作って仏壇に供えているけれど、僕は餡子のお菓子は苦手だ。ポテトチップスやポップコーンの方が嬉しい。
「仏壇の写真と僕は似てないよ?」
「ありゃあ爺さんがあんたの父さんよりも年取った時の写真さね。大人になればあんたもあんな顔になるさね」
「おはぎも嫌いだよ?」
「爺さんも若い頃はしょっぱいものとか辛いものが好きだったさね。でもあたしに付き合って食べている内に好きになってたさね」
それって嫌いなものを無理やり食べさせられて好きになっちゃったって事?迎えの家のエリカちゃんが、給食にミックスベジタブルが出るたびに泣いているけど、あれも好きになるの?
「エリカちゃんも嫌いなものを食べれるようになる?」
「それは分からんさね。でもヒロトが美味しそうに食べていたらエリカちゃんも好きになるかもしれないさね」
「どうして?」
「ヒロトは栗ご飯が嫌いだったけど、エリカちゃんの家と栗拾いに行って取って来た栗ご飯は美味しく食べていたさね」
「あっ! 本当だっ!」
僕はモンブランは好きだけど、栗ご飯と正月のくりきんとんは嫌いだった。だけどエリカちゃんと楽しく拾った栗で作ったご飯は美味しかった。そして正月の栗きんとんも食べれるようになっていた。
「エリカちゃんは栗が好きさね」
「うん、エリカちゃんは栗が大好きだよ」
「一緒に皮を剥いたさね」
「うん、虫が出てきて気持ちわるかったよ」
「エリカちゃんが美味しそうに食べているのを見てヒロトも好きになったさね」
「そっかぁ……」
あれ?でも何でエリカちゃんが美味しそうに食べていると好きになるの?
縁側のお婆ちゃんと恋をしている小学生 まする555号 @masuru555
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます